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 7月4日(金)公開の主演映画『「桐島です」』で、実在の指名手配犯・桐島聡を演じた俳優・毎熊克哉さん。本作は、1970年代に発生した連続企業爆破事件の犯人として指名手配され、約半世紀にわたり逃亡生活を送った末に病死した桐島の人生を描いている。
 

 後篇では、この作品に懸けた想いや役作りへのアプローチ、そして40代を目前にした今の心境について、じっくりと語っていただきました。


こんな機会は役者人生において多いものではない

──今回、実在した指名手配犯を演じた最新主演作『「桐島です」』。出演オファーが来たときの率直な感想は?

 撮影が2024年の7月だったのですが、その2ヶ月前ぐらいに声をかけていただき、脚本を読みました。それで、高橋伴明監督とお会いして、1時間ほどお話して「やります!」とお答えしました。レジェンドと呼ばれる伴明さんがあの桐島をテーマに撮って、その主演に僕を選んでくれたら、断る理由なんてありません。こんな機会は、この後の役者人生においても、決して多いものではないと思いましたし、伴明さんとお話する前から、僕の中では受けることは決めていました。

──毎熊さんから見て、高橋伴明監督の作品の魅力とは何でしょうか?

 伴明さんの前作・映画『夜明けまでバス停で』を観たときに、もっと若い監督が同じ題材を撮った場合、あえてテンポ良く、波みたいなものを作ってしまうと思ったんです。でも、伴明さんは淡々としたリズムで人間のドラマを形成していく。見せ場というものより、叙情的な空気感や行間みたいなものをとても大切にされていて、それが今回の映画『「桐島です」』の脚本を読んだときにも感じることができたんです。

2025.07.04(金)
文=くれい響
写真=平松市聖
ヘア&メイク=MARI(SPIELEN)
スタイリング=カワサキ タカフミ