やりたいことを考えつつ、根本的な部分を見つめ直す

──現在公開中の個人制作によるアニメ『無名の人生』にも声の出演で参加されています。映画『ケンとカズ』で一躍注目された毎熊さんだけに、やはりインディーズ作品に対するこだわりを強く感じます。
映画のジャンルにもよるとは思うのですが、丸く収まっている作品よりは、どこか勝負を賭けている作品の方が魅力的に感じます。あまりにも表現に対する規制が多い中、どこか突き抜けるような力を持っている作品に関わるのは、俳優にとっても刺激的で、得るものも大きいです。たとえ批判される面があったとしても、そっちの方がいいかなと思うんです。
──3年前の取材では、今後の目標や展望として、「国や年代、性別、ステージを限らずにたくさんの人と出会い、作品を作りたいですし、自分でも想像がつかないところまで行けたら楽しそう」と仰られていました。
それは、今もあまり変わっていないです。その言葉通りのことはやれていますけれど、どこか完結してないというか、3年ぐらいでは、そこまで変わっていないです。20代のときは役者といいながら、それだけではなかなか食べられず、たまに自主映画をやる程度で、役者をやっている時間の方が少なかったんです。それで20代の最後に映画『ケンとカズ』という映画のおかげで、役者としての切符をもらって、30代はその切符を手に、無心でいろんな経験させてもらっています。40代は無心で突き進むというより、少し自分がしたいことを考えつつ、根本的な部分を見つめ直すことができればいいかも、と思っています。
──今後、プロデュース業も続けられていく予定ですか?
映画『東京ランドマーク』での経験を通じて、やるなら生半可な気持ちではできないなと感じました。またプロデュースをするなら、これまでとは違う視点や経験が必要になってくると思います。なので、今後またやるかもしれないし、やらないかもしれない。でも、ひとつ言えるのは、楽しいということは分かっているんです(笑)。
映画『「桐島です」』

1970年代、高度経済成長の裏で社会不安が渦巻く日本。大学生の桐島聡(毎熊克哉)は反日武装戦線の活動に共鳴し、組織と行動を共にする。だが、一連の連続企業爆破事件で犠牲者を出してしまったことで、深い葛藤に苛まれる。組織が壊滅状態となり、指名手配された桐島は偽名を使い、逃亡生活をつづけ、ある工務店で住み込みの職を得る。そして、ライブハウスで知り合った歌手キーナ(北香那)が歌う「時代おくれ」に心を動かされ、相思相愛の関係となる。
(C)北の丸プロダクション
7月4日(金)より、新宿武蔵野館ほかにて公開中
https://kirishimadesu.com/
毎熊克哉(まいぐま・かつや)
1987年3月28日生まれ。広島県出身。2016年公開の主演映画『ケンとカズ』で第71回毎日映画コンクール、スポニチグランプリ新人賞など、数多くの映画賞を受賞。主な映画出演作に、『いざなぎ暮れた。』(19)、『サイレント・トーキョー』(20)、『孤狼の血 LEVEL2』(21)、『マイ・ダディ』(21)、『猫は逃げた』(21)、『冬薔薇』(22)、『世界の終わりから』(23)、『初級演技レッスン』(24)、『悪い夏』(25)など。

2025.07.04(金)
文=くれい響
写真=平松市聖
ヘア&メイク=MARI(SPIELEN)
スタイリング=カワサキ タカフミ