夢はメジャーのように大きく海外進出!?
『貸本屋おせん』も『往来絵巻』も、それぞれ5つの読み応えのある短編が収められています。僕はちょうど2時間くらいで1話分を読み切れますが、長編を読んでいるときは1冊を読み終えるまで途中では止められない。だけど、短編集だと1話読んだところで「よかったなぁ」という気持ちでその日を終えられます。土日や早く帰れた夜に1話ずつ読むのにも、長さ的にちょうどいい。
ミステリー要素も1話ごとに謎解きされるので――僕はミステリーも大好きで、横山秀夫さんや柚月裕子さんのファンなんですが――ふだん歴史時代小説はあまり読まれない方にも、このおせんのシリーズはお勧めしたいですね。高瀬さんにはどんどん新作を書いていただき、しっかり紀伊國屋書店としても応援をして売っていきたいと思います。


いまアメリカでは吉川英治の『宮本武蔵』の英語版がよく読まれているそうです。『バガボンド』の井上雄彦さんの絵が表紙なので、もしかしたら漫画と間違って買っているのかもしれませんが、侍ブームが来ているようです。AI翻訳の発達もあり、いい本は海外にもどんどん広まっていくチャンスがあります。
紀伊國屋書店は、ニューヨークはもちろん、シアトル、サンフランシスコ、ロサンゼルス、シカゴ、アトランタなどアメリカにも積極的に出店していますが、目標はメジャー30球団の本拠地すべてに30店舗展開です。そういう大きな目標を持って、これからも文芸作品を大切にしながら、豊かな出版文化を育てていきたいと考えています。


貸本屋おせん(文春文庫 た 116-1)
定価 836円(税込)
文藝春秋
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往来絵巻 貸本屋おせん
定価 1,870円(税込)
文藝春秋
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2025.07.05(土)
文=高井昌史