たいへんつらいが、日本の子どもの自死人数は二〇二四年に過去最多となってしまった。五二九人の小中高校生が自ら命を絶ったのである。日本の子どもの自殺率は他国に比べて非常に高く、G7の国の中で一〇歳から一九歳の死因で自殺が一位となっているのは日本だけだ。厚生労働省の調べでは、「学業不振や進路に関する悩みなどの学校問題」、「うつ病などの健康問題」、「親子関係の不和などの家庭問題」が理由の上位となっている。当事者の大人でも大きな衝撃を受けるのに、両親の離婚が子どもにショックを与えないはずはない。両親の離婚で子どもの心は置き去りにされてきた。子どもは物ではない。不幸のガラパゴスにおける最大の被害者は子どもである。

 二〇二四年は、日本にとって画期的な年となった。五月二四日、離婚後も両親が共同で親権を持ち続けることのできる改正法が、衆参両院において賛成多数で可決して公布されたのである。一世紀以上続いてきた法律の条文が大きく書き換えられたのだ。

「親権」という言葉を聞いても、離婚の当事者をのぞく多くの人にとっては遠い話のように感じられるかもしれない。

 しかし、離婚後の親権のあり方を考えていくと、男と女や親のあり方に始まって、子どもとはどういう存在なのかに思考は進み、やがて家族とは何なのかという問いに行き着く。その先にあるのは、共同養育という世界だ。この世に生まれ出て、両親の愛のもと、祖父母や親戚、さらには地域共同体に見守られて育ってこそ、人は幸せなのだ。

 つまり、離婚後の親権のあり方を決めることは、現在の私たちの家族観をどのように法に反映させるかを問うことであり、あるべき日本社会の姿と家族の未来をデザインすることにもつながってゆく。

 あなたの周囲にいるさまざまな家族を思い浮かべてほしい。決してこの話題が当事者だけの問題ではないということに思いいたるはずだ。彼らの姿は、あなたの家族の未来かもしれない。幸福な家族の姿が思い描けない社会では、少子化はますます進むだろう。

2025.06.10(火)