流行の「自己肯定感を上げよう」。でも、わざわざ上げるもの?
そもそも私は悩みがないこと、悩まないことがいいことだとは全く思っていません。近年では、悩んでいる人は自己肯定感が低い人だという言われ方をしたり、自己肯定感を上げる方法がバズったりしていますね(私もかつてそんな類いの本を出しましたが)。適切な自尊感情は確かに必要だと思います。ただし今流行っている自己肯定感というのは、本来の自己肯定ではなく、要するに楽観的に生きようということなんですね。それでは危険をきちんとスクリーニングする機能がオフになってしまいます。
『平成26年版 子ども・若者白書』(内閣府)で「日本の若者の自己肯定感が国際的に低いことが判明した」と騒がれましたが、欧米の基準をそのまま日本人に置き換えることには大いに疑問を覚えます。いわゆる幸福度の高い国のランキング上位国は、抗うつ剤の消費国ランキング上位国とほとんど被っているという事実をどう考えますか?
私自身は悩みを抱えていない状態になると、かえって不安です(笑)。毎日筋トレをする人が1日しないと気持ちが悪いと感じるように、私は悩みがないと気持ちが悪い。ああ、もっとこうすればよかったと悩むことは、学習を促すパラメーターとして働くことにもなります。行き詰まっている時は必死で考える。それがプログレスになります。悩みがたくさんあって冴えない人生だと思っている人には、私はこう言いたいです。それは鉱脈がたくさんあるということですよ、悩みが全くない人生なんて、掘り尽くされてしまった鉱山みたいな人生ですよ、と。

悩脳(のうのう)と生きる 脳科学で答える人生相談
定価 1,650円(税込)
文藝春秋
失敗が怖い、恋ができない、SNS疲れ……。ままならない悩みを科学目線で解明する「週刊文春WOMAN」の人気連載を書籍化。読者と有名人の悩みに答えるほか、森山未來、二階堂ふみらとの対面相談も収録。
中野信子(なかの・のぶこ)
1975年、東京都生まれ。脳科学者。東日本国際大学教授。京都芸術大学客員教授。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。医学博士。著書に『サイコパス』(文春新書)、『ペルソナ 脳に潜む闇』(講談社現代新書)、『咒(まじない)の脳科学』(講談社+α新書)など多数。
脳科学者 中野信子さん「そもそも悩むのはなぜでしょう?」
会場:代官山 蔦屋書店シェアラウンジ イベントスペース(Zoom配信あり)
日時:7月3日(木)19:00~20:30
料金:リアル・オンライン参加券 1,650円
サイン入り書籍付き参加券 1,430円+書籍代 1,650円
(オンラインの場合は書籍配送料+550円)
詳細:代官山 蔦屋書店イベント告知HP
https://store.tsite.jp/daikanyama/event/humanities/47628-1731320530.html
お申込みは以下の専用応募フォームより
https://eventmanager-plus.jp/get/a141d2ee80c9ddabe05b62e20d76c6c02453f09d8e1c700c6dae2e23258204cb
チケットのお問い合わせ:代官山 蔦屋書店 daikanyama.tsutayabooks.onlineevent@ccc.co.jp
その他のお問い合わせ:株式会社文藝春秋 宣伝プロモーション局 プロモーション部 pr@bunshun.co.jp
■中野信子さんへのお悩みを募集!
イベント当日は、皆さんのお悩みに中野さんが答える「人生相談」も予定しています。6月23日(月)18時までに、CREA編集部 creaweb@bunshun.co.jp 宛に(件名を「中野信子お悩み相談」に)、お名前(ペンネーム可)とともにお送りください。当日、会場にてご回答いただく予定です。
※限られた時間のため、すべてにお答えいただくことはできません。
続きは「CREA」2025年夏号でお読みいただけます。

2025.06.09(月)
文=小峰敦子
写真=平松市聖
CREA 2025年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。