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日曜日の夜に『サザエさん』を観て涙をこぼす教頭

――しろやぎさんは、2020年にブログで『あなたそれでも教師ですか?』という漫画を連載していました。教員の労働環境には当時から興味があったんですか?

しろやぎ あの漫画を描いていたのは学校を退職して1年経ったころで、「経験をもとに漫画を描こう」と始めただけであまり深くは考えていなかったんです。

――今作で改めてテーマにした理由は?

しろやぎ パートナーから何度も「描いて」と言われたのはきっかけの一つですね。

 教員の労働問題って、視野を広げるとどんな人にも共通する話題なんですよ。教職に就く人だけがあるあるネタとして楽しむ漫画にはしたくありませんでした。学校関係者じゃない人たちにも読んでいただいて「こんな世界なんだ」と興味を持ってもらったり、「知ってはいたけど、冷静に考えたらやばい」と危機感を抱いたりしてほしいと思いました。

――学校現場について詳しく描かれた今作ですが、取材はされたんですか?

しろやぎ 新規の取材に加えて、臨時講師時代の友人や学校で働いていた経験があるパートナーに改めて話を聞きました。管理職の話はあまり聞いたことがなかったので、編集部を通して教頭や校長の経験者を募り、話を聞かせてもらいました。

――印象的だったことは何ですか?

しろやぎ 教頭に着任してしばらく経った頃に、「日曜日の夜に『サザエさん』を観ていたら学校に行くのが嫌で涙がこぼれた」というエピソードです。「年配の先生でも、そんな風に泣いたりするんだ」って改めて驚きました。

 教頭という管理職の立場になると、転職したのかと思うくらい、仕事の内実が変わるそうですね。そんな慣れない業務に忙殺されて大変なだけではなく、それまで仲間だったはずの同僚の先生たちから「敵」とみなされてしまうことがあると聞きました。そんな管理職のつらさに、話を聞いていて胸が締め付けられるものがありました。

2025.06.03(火)
文=ゆきどっぐ