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 生徒が下校した後も部活に付き添う熱心な運動部顧問がいる中、颯爽と定時で帰る中学校教師・白兎(しらと)。部活動の顧問に指名されても「わたし、部活には行きません」ときっぱりと断り、パチンコ屋に姿を消します。

 漫画『白兎先生は働かない』は、定時になったら絶対に帰る中学教師・白兎と、彼女に振り回される教員たちをコメディタッチに描いた作品です。働かない白兎先生が職員室で浮く中、一人で抱えきれないほどの業務を抱えた教員たちが少しずつ人生を壊していく姿に、「本当に大切なものは何か」を考えさせられます。著者のしろやぎ秋吾さんに制作のきっかけや作品に込めた思いを伺いました。

インタビュー【後篇】を読む
マンガ『白兎先生は働かない』第1話を読む


臨時講師時代、経験のないスポーツの顧問も引き受ける

――漫画『白兎先生は働かない』は、教員の労働環境を1話ずつ掘り下げています。テーマにしたきっかけを教えてください。

しろやぎ 実は僕自身、臨時講師として学校に勤務したことがあるんです。教科は美術を受け持っていて、高校では運動部の顧問も引き受けていました。経験したことのないスポーツで、僕は試合時の移動要員として付き添ったんです。

――未経験の運動部顧問は大変そうですね。

しろやぎ 当時の経験を参考に、『白兎先生は働かない』を考える前には、いわゆる「部活未亡人」をメインテーマにしたプロットを作ったんです。部活で事故を起こしたり、追い込まれていく主人公を描いて、かなり暗い話なってしまいました。

――今作でも部活未亡人をテーマにした作品が収録されていますが、ストーリーは違ったんですね。

しろやぎ かなり違いました。それから編集者に相談して、学校の労働環境をテーマに1話ずつ作る連作短編形式で制作することに決まったんです。

2025.06.03(火)
文=ゆきどっぐ