――反対に、アスリートならではの困ることはありますか。

村上 お互いに意志を曲げないことですかね。アスリートって信念があるじゃないですか。だからそれを貫こうとしてしまうんです。結婚前は、何か問題があった時、彼はちゃんと話し合って解決したい、私は一晩寝れば忘れるという感じで、問題の本質というより解決方法でよくケンカをしていました。

 でも今は、まったくしなくなりましたね。私は仕事のことでよくイライラするのですが、彼がしっかり耳を傾けてくれるので、話しているうちにスッキリするというか(笑)。

「今、ようやくちゃんと恋愛が出来ている」

――出会ってからはもう10年以上経っているということですが、よりいい関係を築けているんですね。

村上 どんどん好きになっています。今、ようやくちゃんと恋愛が出来ているなって思いますね。現役時代はスケジュールも頭の中も、どうしても競技優先だったので。

――結婚後の変化はありますか?

村上 彼は、話の整理の仕方とか、表現方法がとても豊かなんですよ。私は指導者になってから言語化の難しさを感じることがとっても多くて。彼の言葉の使い方を参考にしていますね。「今、いいこと言ったね。メモメモ」と、スマホに「いいこと言ったメモ」をつけるようになりました。

共通の夢は、ナショナルチームを今以上に輝かせること

――今年から2人とも、ナショナルチームで本格的にスタートですね。

村上 はい。彼はこれまで代表選手の個人トレーナーとしての関わりでしたが、今年からは男子ナショナルチーム全体のトレーナーとして本格的に活動を始めます。私は今年初めから海外遠征続きで、彼に「さすがに寂しいな」と言われましたけど、今後は男女同時開催の国際大会では一緒になることが多くなります。

――「寂しい」と言われるんですね。

村上 言われますね。えっ、もしかしてあまり言わないんですか? 私も言いますよ(笑)。

――いえ、ほほえましいです。

村上 それならよかったです(笑)。

 私たち2人の共通の夢は、ナショナルチームを今以上に輝かせること。仕事の内容は違うけど、選手たちを輝かせたい思いは一緒。彼もそうだと思いますが、自分が学んだことを実践し、選手が成長している姿を見ることができるのはこんなに楽しいのかと、やる気に満ちています。ただ、新婚旅行をまだしていないので、落ち着いたら2人でヨーロッパを旅行してみたいですね。

 あ、プライベートなことを随分喋ってしまいました。こんなに彼について語ったのは初めてかも。隠すことでもないけど、でもやっぱり照れちゃいますね。

撮影=松本輝一/文藝春秋

2025.05.31(土)
文=吉井妙子