世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第36回は、たかせ藍沙さんが薔薇の咲き誇る国、イランで女子力をアップさせたお話。

イランの薔薇を求めてえっちらおっちら

 「その日程はイランに行くので不在になります」という返信メールが届いた。送信元は、イランから原料を輸入して薔薇のスキンケア製品を作り、エステサロンも経営しているヴァレ デ ローズの新井美月さん。思わず「同行させてもらえませんか?」と返した。ここ数年、コスメ用、食用の薔薇を追いかけている私は、条件反射のように「行きたい!」と書いてしまったのだ。

テヘランに着いて最初の食事はラムとチキンのミックスケバブ。ご飯は粘りがなくパラパラとした長粒米だ。上の部分が黄色いのはサフランライスが載っているため。このご飯の上にバターを載せてよく混ぜて食べる。

 ペルシャ湾を挟んでアラビア半島の対岸にあるイランは、日本の約4.5倍もの国土を持ち、7カ国と国境を接している。シルクロードの中継地としてアジアとヨーロッパの文化が行き交い、華やかな王国として栄えた歴史のある国で、今は大統領制の共和国となっている。準備期間が短く、入国ビザは緊急申請で、航空券は出発前日に購入という、綱渡りながらもなんとかテヘランへと辿り着いたのだった。

夜を徹して走る途中のドライブインで、トイレから戻ってきたら、車のトランクの上が食卓になっていた(笑)。チャイのためのお湯はドライブインの売店で売っている。

 イランに到着するとき、女性は髪を隠してから入国手続きをする必要がある。飛行機が着陸してシートベルトサインが消えると、外国人の女性たちは一斉に荷物からスカーフやショールを取り出すのだ。4年前にテヘランに駐在していた友人に、当時前髪を出すことができるようになって女性たちが喜んだと聞いた。ひとまずは、髪を全て隠して降りてみることにした。

このような荒野の中を延々と走った。周囲はカラカラに乾燥しているというのに、泉が湧いて小川が流れている一角だけに、古くから野生の薔薇が自生していたという。

 到着ロビーで、現地を案内してくださるマジードさんご夫妻が待っていてくれた。と、奥さんのメヘナーズさん、前髪も、サイドの髪も、うしろ髪も、スカーフの下から美しいウェーブを描いているではないか! 新しい大統領になってから、かなり自由になったのだとか。きっちりスカーフを巻いていた私は、逆に「リラックスして」と言われてしまう始末。驚いた。別便で到着した新井さんと合流し、まずはテヘランのホテルへ。

左:やっと辿り着いた薔薇農園。既に日差しが高くなってしまっていた。
右:カーシャーンではこの季節、町のあちらこちらでローズウォーターが売られている。滞在中に飲んだり、スキンケアに使ったりするために、さっそく1本購入した。

 午後は休んでロングフライトの疲れを取り、薔薇の産地であるカーシャーンへは夜中に出発することに。休憩を含めると所要時間は5時間ほど。夜明け前に着くはずだったのだが、規模の大きな薔薇農園を探すことに手間取り、すっかり日が昇ってしまった。ひとまずこの日はホテルに戻ることに。極上の薔薇にめぐり会うためには粘り強さも必要なのだ!

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2014.06.03(火)
文・撮影=たかせ藍沙