世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。
第28回は、たかせ藍沙さんがフィリピンで出会ったカラフルな生花の芸術について。
摘みたての花や葉をていねいに並べて
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バリ島やタイなどの南の島のリゾートに行くと、レセプションやスパの入り口などで、丸い陶製の器に張られた水の上に隙間なく花を浮かべた飾りを見かけることがある。マンダラと呼ばれるこの飾りは、ほぼ毎朝、生花を使ってリゾートスタッフやスパスタッフが作っているのだ。
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フィリピンのマニラから車で南へ2時間弱の場所にある5ツ星リゾート、ザ・ファーム・アット・サンベニートにも飾られていた。ここは、スパ&ウェルネスを目的として造られたリゾートで、49ヘクタールの緑溢れる敷地に、一戸独立型の客室コテージがたったの33戸だけ。自然の中で心身共に健康を取り戻すというコンセプトのもと、食事はすべてベジタリアンメニューという徹底ぶりだ。
ザ・ファームでは、クリニックやスパの入り口にマンダラ・フラワーが飾られていた。中に入ると、スパスタッフがレセプションに置かれている大きなマンダラ・フラワーを作り直していた。
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右:一輪の花は鮮やかな翡翠色で、まるでマメに羽根が生えているかのような形をしている。
縁取りに使っていたのは鮮やかなピンク色をしたブーゲンビリア。実はピンク色をしているのは花ではなく葉(苞葉)。花はその中心から突き出した小さな芯の先に白い花びらをつけている。スタッフが最後に摘んできた小さな白い花は、フィリピンの国花でもある「サンパギータ」。日本では「アラビアジャスミン」や「茉莉花(まつりか)」と呼ばれる甘い香りの花だ。
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1枚ずつ、1輪ずつ並べるからこそ、そんな花のことも気になるというもの。日本で見慣れない花や葉について教えてもらっていると、あっという間にマンダラ・フラワーが完成した。屋外に飾られるので、風で花が飛んでしまわないようにしっかりと水に密着させるのがコツだという。
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2014.04.08(火)
文・撮影=たかせ藍沙