
ともに「老い」がテーマの新刊『アウト老のすすめ』『老いを読む 老いを書く』が話題の、みうらじゅんさんと酒井順子さん。「なぜ女性は歳を取ると下ネタが話せなくなるのか?」「『若づくり』じゃなくて『老けづくり』がしたい」など、「老いるショック」トークに花が咲きます。そしていつしか話題の中心は、お二人の記憶に強く刻まれているあの方に――。(全2回の2回目。前篇を読む)
寂聴さんが描いてくれた似顔絵

酒井順子 私、ずっとこの髪型してるんですよ。結んでメガネ、みたいな。
みうらじゅん 知ってます。酒井さんは、ずっとオリーブ少女だもん。
酒井 あはは。でも飽き飽きしてるんですけど。この髪型に。
みうら わかります。僕も飽き飽きしてます(笑)。
酒井 飽きることにも飽きちゃって、結果として同じ髪型してるんですけど。でも、こうしていることが私にとっては剃髪なんだなって思うんですね。ほぼ髪を剃ってるのと同じっていうか。仕事していても一筋の乱れもなく、何をしていても髪が顔にかかることがないので、気が散らない。そういう意味で「これは私にとっての剃髪なんだ」って思うようにしているんです。
みうら (瀬戸内寂静さんの声マネで)そう思うわよ、私も。あなたにとっての剃髪よ。
酒井 寂聴先生と話せていると思うと嬉しいです。またカレンダー出してください(笑)。
みうら 一度だけ番組の収録で寂静さんに会ったことがあって、そのとき楽屋が一緒だったんですよ。僕、そのとき、髪の毛を真っ赤に染めてたんですが、離れた席におられた寂聴さんが大きめの封筒の裏になにかお描きになっていて。そのあと、つかつかつかと近づいて来られて、「これ、あなたにあげる」って。封筒の裏に赤いボールペンで、僕の髪の毛だけが描いてあったんです。

みうら 「あなたの似顔絵だから」とおっしゃっていたんですが、顔は描いていなくて。「髪型はその人を表している」っていうことをおっしゃっていたような気がしますけどね。
酒井 多分、寂聴先生はみうらさんのことをずっと気にされてたんだと思います。仏教界のライバルって思われていたかもしれないですよね。
寂聴さんからいただいたお手紙

みうら 3月3日に京都の三十三間堂で、いとうせいこうさんと33年後の約束ということで会ったんですけど、その日たくさんの人が集まってくださったんです。三十三間堂の方が「こんなに人が来たのは寂静さんの法話以来ですよ」っておっしゃっていたから、「僕らは寂聴さんの生まれ変わりなんだ」ってちょっと思いました。
酒井 そうかもしれないですね(笑)。私も寂聴先生からお手紙をいただいたことがあるんですよ。先生の文庫に解説を書いたら、お礼のお手紙を手書きでくださったんです。今どき文庫の解説のお礼にお手紙くださる方ってあまりいらっしゃらないですよね。
みうら 僕も酒井さんとの対談を文庫に収録させてもらったのに、手紙書いてない……すみませんでした!

酒井 それを言いたかったんじゃないです(笑)。でも、寂聴先生からいただいた封書のお手紙は、ちゃんと直筆で、本当に励ましてくださるありがたいことが書いてあって。自分も歳を取ったらこうなりたいと思いました。
みうら 僕も未だに手書きなんですよ。手書きのほうが、ありがたみがありますよね。
酒井 でも私、この前、若い編集者の方にお礼の手紙を封書で出したんです。そうしたらその方から「ポストに手書きの封書が入っていて怖かったです」ってメールが来て。若い人は手書きの手紙が届くと「怒られるのかな?」と思うって言われて、シューンってなっちゃったんですけど。
みうら 僕らの時代は、怒ったり相手を怖がらせたりするときは活字を切り貼りしたもんだけどね。フォントが違う活字を合わせるのが粋でしたけどね(笑)。
2025.05.23(金)
文=ライフスタイル出版部
撮影=佐藤 亘