この記事の連載

 ご時世的には不適切だけど思わず笑ってしまうエッチ系コレクションから、長年お世話になった写真集やビデオなど、どうしても捨てられないお宝たちが溜まりに溜まり、みうらじゅんさんのご自宅は現在「マイ秘宝館」状態。集まった「いやら収集品」100点を軽妙なエッセイ&写真で紹介する、みうらさんの新刊『通常は死ぬ前に処分したいと思うであろう100のモノ』の中から「女豹のポーズをキメたくて豹柄の全身タイツ」を特別に公開します。


自らが女豹となればいい

巣鴨でゲットした豹柄を全身にまとうみうらじゅんさん。
巣鴨でゲットした豹柄を全身にまとうみうらじゅんさん。

 とある動物園の豹のいる柵の前。僕はカメラを構え、例のポーズが出るのを今か、今かと待っていた。

 例のポーズとは、豹でピィーンときた読者もおられるかもしれない。

 そう、グラビア界でいうところの「女豹のポーズ」である。

 もう少し、詳しく解説すると、膝をついて腕を大きく前方に伸ばした、いわゆる四つん這いの姿勢。見上げる目線とその妖艶な表情が重要なポイントである。しかし、豹のようなしなやかな肢体の持ち主に限られる。

 かねてよりそのポーズには関心があったが、豹は実際にそのポーズを取るのか、一度じっくり観察したいと思ったのだ。

 でも僕には、オスかメスかの区別もつかなくて、ただ豹にカメラを向けるだけ。しかも、クソ暑い夏の午後。豹たちもすこぶるダレていた。

 木の上で寝てたり、どれも動く気配すらない。

 ま、豹としてもカメラオヤジにサービスする気持ちなどさらさらないので仕方ない。

 随分、その場でネバったが結局、例のポーズは出なかった。

 さて、今回紹介する品は、〝おばあちゃんの原宿〟と呼ばれてる巣鴨地蔵通り商店街で見つけた豹柄の服である。

 自らが豹となり、ポーズをキメてみればいいと思って購入した。

 豹柄の服はいっぱい並んでいたが、より本物の豹を目指し、全身タイツのようなやつを選んだ。写真を見てほしい。

 女豹のポーズで撮らなかったのは、何だかバカらしくなったからである。

みうらじゅん

1958年京都市生まれ。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。以来、イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャンなどとして幅広く活躍。著書に『アイデン&ティティ』、『マイ仏教』、『見仏記』シリーズ(いとうせいこうとの共著)、『「ない仕事」の作り方』(2021年本屋大賞発掘部門「超発掘本!」に選出)など。
*しもだて美術館にて、6月30日(日)まで「みうらじゅんFES マイブームの全展」開催中。引き続き、7/13(土)〜8/25(日)美術館「えき」にて「みうらじゅんFES マイブームの全貌展 in 京都」開催予定です。会場では、新刊『通常は死ぬ前に処分したいと思うであろう100のモノ』をみうらじゅん×セクシー大根シール付きで販売いたします。数に限りがあるのでお早めに。

通常は死ぬ前に処分したいと思うであろう100のモノ

定価 1,320円(税込)
文藝春秋
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2024.06.19(水)
文=みうらじゅん