この記事の連載
- 『通常は死ぬ前に処分したいと思うであろう100のモノ』#1
- 『通常は死ぬ前に処分したいと思うであろう100のモノ』#2
ご時世的には不適切だけど思わず笑ってしまうエッチ系コレクションから、長年お世話になった写真集やビデオなど、どうしても捨てられないお宝たちが溜まりに溜まり、みうらじゅんさんのご自宅は現在「マイ秘宝館」状態。集まった「いやら収集品」100点を軽妙なエッセイ&写真で紹介する、みうらさんの新刊『通常は死ぬ前に処分したいと思うであろう100のモノ』の中から「ミョ~にセクシーな二股大根の抱き枕&箸置き」を特別に公開します。
妄想を刺激するセクシー大根
テレビのニュース番組。冬場になるとよく、大根畑からの中継が入る。リポーターが農家の方に出荷状況を伺うという内容だが、たまに時間が余ると、「これは普段、出荷しないものなんですが」と、断った上で珍しい形体の大根を紹介することがある。
「えー!? これは珍しい。初めて見ました!!」
こういうロケには新人アナがつきものなのか、やたらはしゃいでみせるのも常。
それを手に持ち、カメラのほうに差し出すので大写しになる。
同時に僕もその瞬間、テレビに釘付けになる。
通称・二股大根。色の白さも相まって、ミョ~にセクシーな形体。
“この上から黒の網タイツなんか穿かせたら、さらにグッとくるだろうな”
などと思っているのは僕だけではないだろう。
まだ、時間が余ってるらしい。リポーターは、それを手にしたまま、焦った表情を浮かべている。逆に農家の方がフォローに回り、どうしてこんな珍しい形の大根が生まれるのかの説明を始める。
「へぇー、そうなんですか!」
リポーターは何度もそう言い、頷いているだけ。ここからは想像だけど、ロケが終わりディレクターから「ちゃんとコメントしなきゃダメだろ」と、新人アナは説教を喰らってると思う。
二股大根グッズはマストで購入
そんなセクシー二股大根。グッズも色々出てることを知り、見つけ次第ゲットしているのだが。
二股大根を模した抱き枕は、商品名がそうだったから確実だけど、箸置きは果たしてモデルが大根なのか? 上の三個は人参の色をしているし、右はワサビ? 下はかぶら?
どれも二股だから仕方なく買ったけど、それじゃこの先電気屋で二股ソケットを見つけても買わなきゃいけない?
みうらじゅん
1958年京都市生まれ。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。以来、イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャンなどとして幅広く活躍。著書に『アイデン&ティティ』、『マイ仏教』、『見仏記』シリーズ(いとうせいこうとの共著)、『「ない仕事」の作り方』(2021年本屋大賞発掘部門「超発掘本!」に選出)など。
*しもだて美術館にて、6月30日(日)まで「みうらじゅんFES マイブームの全展」開催中。引き続き、7/13(土)〜8/25(日)美術館「えき」にて「みうらじゅんFES マイブームの全貌展 in 京都」開催予定です。会場では、新刊『通常は死ぬ前に処分したいと思うであろう100のモノ』をみうらじゅん×セクシー大根シール付きで販売いたします。数に限りがあるのでお早めに。
通常は死ぬ前に処分したいと思うであろう100のモノ
定価 1,320円(税込)
文藝春秋
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2024.06.19(水)
文=みうらじゅん