〈広瀬すずが「あの子、背が高くてスタイルもいいから、声かけた方がいいよ」と…高校時代の鈴鹿央士を芸能界にスカウトしたワケ〉から続く
4月25日より上映中の映画『花まんま』では、フミ子(有村架純)の婚約者、中沢太郎を演じ、少し気弱なカラスの研究者を熱演した。作品の魅力と、鈴鹿央士がもう一度会いたい人物を尋ねた。(全2回の後編/最初から読む)

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出演映画で演じた“カラスの研究者”
――映画『花まんま』で鈴鹿さんが演じた中沢太郎さんは、〈フミ子さんの婚約者で、同立大学の助教でカラスの研究者。まっすぐでお人よしな青年〉と紹介されています。ご自身で太郎さんに似ている、または違うところがあるとすれば、どんなところだと思いますか?
鈴鹿央士(以下、鈴鹿) 僕は太郎さんほど誠実ではなくて。太郎さんはフミ子さんから秘密を打ち明けられたときもそうですが、何か起きたときに物事をちゃんと理解したい人。人に寄り添う気持ちも強いし、太郎さんの誠実さは素敵だなって思うんです。僕も何かあればちゃんと理解したいって思うのですが、太郎さんとは少し違うといいますか。

――そうなんですか……?
鈴鹿 太郎さんは人のことを思って理解したいと思える人で、僕は自分が前に進むために、自分がわからないまま進むのがイヤで理解したいと思う人なんです。他者に優しい太郎さんとは違い、自分が納得したいから理解したいというのはただの自分の欲だなと。僕も太郎さんのようになりたいです。
――今回の映画のために役作りなど意識したことはありましたか?
鈴鹿 太郎さんは「学者肌で気弱」と台本にあるのですが、この「気弱」の部分はたった一言の情報でもちゃんと役に残しておこうと思いました。
――気が強いフミ子さんの隣で、前に出るでもなく優しさもありますよね。
鈴鹿 はい。それからカラスの研究者の役で、カラスと喋る場面が何度かあったので、カラスについて自分なりに調べたんです。カラスは大きく分けると日本には2種類いて、「ハシブトガラス」と「ハシボソガラス」がいるんです。住宅街でもよく見るカラスなのですが、クチバシの形や頭部の大きさ、鳴き声や鳴き方も違うみたいで、前田(哲)監督に「映画に出てくるのはどっちのカラスですか?」と聞いたら「ハシボソガラス」と言われたので、ひたすら「ハシボソガラス」の鳴き声を聞いていました。家で1人「ガーガー」「グァー」と録音しながら、「これはちょっと違うな」「ここもっと声上げよう」って練習していました。そんな体験は初めてでしたが、楽しかったです(笑)。

――映画では声も動きも本当にカラスと喋っているように見えました。
鈴鹿 本当ですか? ありがとうございます! 嬉しいです。撮影中、監督に「もうちょっと(カラスっぽい感じ)足せる?」と言われて、僕もそうした演出をされたのも初めてだったのですが、「頑張ります!」と言いながら「カァ」「グワー」とか何度もやりました。そうすると、次第にカラスが僕の「カァ」に反応してくれるようになって、こっちを見ていたり、首をカクって傾けたり、その様子が可愛らしくて本当に会話しているなって思いました。カラスと対話している様子がそのまま映像にも出ているなと思います。
2025.05.18(日)
文=松永 怜
撮影=石川啓次/文藝春秋
スタイリング=松川 総
ヘアメイク=TAICHI NAGASE(VANITÉS)