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 直木賞受賞作を映画化した『花まんま』で、面倒見の良い兄・俊樹と二人きりで暮らす妹・フミ子を演じた有村架純さん。セリフはオール関西弁、そして兄役の鈴木亮平さんと息の合った掛け合いを見せています。人情とファンタジー、そして大きな家族愛が見事なバランスで合わさった物語に出演したからこそ気づいたこととは?


「鈴木亮平さんとはお互い身を委ねながら自然に演技が出来た」

――兄妹の絆、そして人情あふれる東大阪の街を描いた直木賞受賞作が原作です。この物語をはじめて読んだ感想を教えてください。

 関西出身なので、セリフがすべて関西弁ということにまず親和性を感じました。「いいな」と心に響くセリフが随所にあったり、関西ならではのテンポ感にわくわくしたり。昔から家族をテーマにした作品が好きなこともあり、楽しみながら読み進めました。どこか懐かしい東大阪の雰囲気とファンタジー要素がうまく融合しているので、どの世代にも刺さるお話だと思います。

 関西弁って、シリアスな雰囲気を絶妙に崩してくれますよね。兄役を演じた鈴木亮平さんも同じく関西出身なので、方言が持つどこか温かい雰囲気を表現できたような気がします。

 どの現場でも、撮影前に共演者の方と演技の相談などはしないようにしているんです。言葉をつくしてしまうと、自分の中で消化しきってしまう感覚があって。

 だから今回も、鈴木さんとは演技について話し合うことはなかったのですが、本番ではぐっと距離感を縮めて、お互いに身を委ねながら、本当の兄妹のような関係性を出せたと思います。

――フミ子の小さな頃の様子も、物語の大事な要素の一つとなっています。有村さんはどのようなお子さんでしたか?

 おてんばで、よく怪我をして帰ってくるような子でした(笑)。スーパーで転んで、頭から血を流したことも。熱もしょっちゅう出ていましたし、母には心配をかけたんじゃないかな。

 地元は田舎でおおらかな雰囲気だったので、近所の子たちと家の前でドッジボールやキックボードをして遊んでました。当時はYouTubeなどもなかったですし、劇中のフミ子と、遊んでいる内容はあまり変わらないかもしれませんね。

――有村さんと『花まんま』の親和性の高さを伺えるエピソードですね。他にも、フミ子との共通点はありますか?

 私は姉妹で、今回は兄妹。そこの違いはきっとあると思うんですが、私もフミ子も妹なのである種の奔放さみたいなところは似ている気がします。鈴木亮平さん演じる俊樹のように、私の姉もきっと色々我慢していたんだろうな、と姉の気持ちに寄り添えました。

 お兄ちゃんを上手に手のひらで転がしてきたちゃっかり者のフミ子が、恋人である太郎さんの前では、少し気が抜けているような面をみせているのがかわいいですよね。妹としてのもフミ子と、一人の女性としてのフミ子。どちらも演じていて楽しかったです。

2025.04.16(水)
文=高田真莉絵
写真=佐藤 亘
ヘアメイク=尾曲いずみ
スタイリスト=瀬川結美子