この記事の連載

「家族という形に血の繋がりは関係ない。大切なことを改めて教えてくれる物語」

――映画『花まんま』では、血縁関係のある家族だけでなく、もっと広い意味で家族を捉えていますよね。有村さんの家族観を教えていただけますか?

 血が繋がっていようといまいと、自分たちがこの形が家族だと思えば、それは立派な家族ですし、唯一無二の存在になっていくのだと思います。婚姻関係がなくたって家族ですし、家事を女親がやるなんて決まりもない。世間が持つ「家族」というイメージも、時代によって変わっていきそうですよね。

――フミ子は手を取り合って暮らしてきた兄にたいしても大きな秘密を抱えているという役柄です。有村さんは、親しい人に秘密を打ち明けるタイプですか?

 すぐには言わないです。一人で秘密を抱え込んでいられるタイプなのかもしれません。全部終わった後に事後報告的な感じで話すことはありますが、細かく説明はしないです。ある程度自分の中で解決してから、友人らがこれでちょっと笑ってくれたらいいな、とエピソードトークとして使っちゃいます。

――秘密をずっと抱えていられる強さをお持ちなんですね。はじめに、「家族をテーマにした作品が好き」とおっしゃっていました。どんな作品がお好きですか?

 昔からフランスのダルデンヌ兄弟(映画『ロゼッタ』や『ある子供』で知られるフランスの映画監督)の作品が好きでよく観ています。特に『少年と自転車』という作品が好き。

 日本の映画は感情の繋がりを大切にしていて、感情移入しやすいようなカット割りになっているものが多いんですが、ダルデンヌ兄弟の作品は社会的な重いテーマを扱っているのに、カット割が斬新。ズバっと切ってくれてから気持ちをずるずると引きずらせないんですよね。そんなクールさにも魅力を感じています。

――もし、ダルデンヌ兄弟からオファーされたら?

 絶対にありえない話ですけど、通行人Aのようなエキストラみたいな役なら出たいですね。どのような感覚で撮影しているのか覗いてみたいです。

花まんま (文春文庫 し 43-2)

定価 836円(税込)
文藝春秋
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» 映画『花まんま』インタビュー【後篇】を読む

有村架純(ありむら・かすみ)

1993年、兵庫県生まれ。2010年に俳優デビュー。’17年NHK連続テレビ小説「ひよっこ」、’21年「花束みたいな恋をした」、’24年Netflixシリーズ「さよならのつづき」など多数出演。今年は「ブラック・ショーマン」の公開が控えている。

映画『花まんま』

2005年・第133回直木賞を受賞した朱川湊人の同名小説が原作。早くに両親を亡くし妹の親代わりとして生きる熱血漢の兄・俊樹を鈴木亮平、奇妙な記憶と秘密を抱えた妹・フミ子を有村架純が演じる。兄の俊樹は、亡くなった父と交わした「どんなことがあっても妹を守る」という約束を守り続けてきた。妹の結婚が決まり、親代わりの兄としてはやっと肩の荷が下りるはずだったのだが、遠い昔に2人で封印したはずの、フミ子のある秘密がよみがえり……。

監督 前田 哲
出演 鈴木亮平、有村架純、鈴鹿央士、ファーストサマーウイカほか
公開日 2025年4月25日(金)全国公開
配給 東映
Ⓒ2025「花まんま」製作委員会
https://hanamanma.com/

次の話を読む「昔は比べられて悔しい思いもしました」有村架純が語る、姉との“心地のよい関係”

2025.04.16(水)
文=高田真莉絵
写真=佐藤 亘
ヘアメイク=尾曲いずみ
スタイリスト=瀬川結美子