世界各国で修業を積んだ

 「ベーカリーケイポート」でパンを作っているのは、台湾出身の呉(ウー)克己さん。台湾、上海でも5店舗を展開してきた人物。

 呉さんは、1980年生まれ、台湾・高雄市出身。大学卒業後、台湾に進出していた日本のパンチェーン・ドンクに入社。ドンクやヤマザキが、台湾のSOGOや新光三越といったデパートに出店し、バゲットなどハード系のパンも販売し始めた時期。

 「2008年には神戸のドンク本社で研修しました」と呉さん。「神戸の街は、高雄と同じで山と海があり、街のパン屋さんのパンもとてもおいしくて、印象的だった」とにっこり。

 元々、台湾でパンが食べられるようになったのは日本統治時代。日本のパンをベースに、ヨーロッパの影響も受けながら、徐々に地元の食材も使われるようになって、台湾ならではのパン「台式麺包」が生まれ、広まっていきます。

 そして、呉さんがドンクで働き始めた頃から、台湾のパン事情はすごいスピードで進化しました。

 2010年以降、ベーカリーのワールドカップに出場して2人も世界チャンピオンが誕生。呉さんは、その一人、王鵬傑(ワンポンジエ)さんを含む3人で起業し、高雄で「ブーランジュリーシェイクスピア」を開業。5店舗を展開する人気店となりました。

 その後、呉さんは2014年にフランスで研修。「ブーランジェリーシェイクスピア」を離れて、2017年、桃園で「ブーランジェリーアンソニーズ」を開業。その後、上海にも展開。

 「ドンクの研修で神戸に来た時から、いつか神戸で店が持てたらという夢があった」と呉さんはにっこり。

 同じく高雄出身の、高校時代の先輩で、関西学院大学を卒業した黄祥銘(ファンシャンミン)さんと起業。2023年に家族と神戸に来て、2024年に「ベーカリーケイポート」をオープンさせました。

「日本人の口に合う様々なパンを作っていきたい」

 バゲットや田舎パン、ライ麦パンなどのサワードウのパンが好きという呉さん。低温で長時間熟成し、砂糖や油脂、具材を加えた「台式軟欧(台湾式ソフトヨーロピアンパン)」は、天然酵母の生地の酸味を減らした、甘みを感じる優しいパンで、そのまま食べられると、すでに台湾では大人気。日本人の好みにも合っています。

 台湾式にアレンジされた「ベーカリーケイポート」のパンは、ヨーロッパや日本のパンをベースにしながらも、独自のアイデアがプラスされ、何でもあり。それがとても自然で無理がない。どれもとてもおいしくて、何度も食べたくなるのです。

 「今まで、ドイツ、フランス、イタリア、アメリカ、韓国などで研修しました。スペインや東ヨーロッパにも行って各国のパンを学びたい」と呉さんは意欲的。ますますパンの種類が増えそうです。

 長田本店に続いて、今年5月、阪神電車の大石駅から徒歩5分ほどの場所に、灘店がグランドオープン。こちらも地域の人気店になるでしょう。

 日本にいながらにして、台湾発の世界のパンで、朝食やおやつタイムができるなんて、幸せ!

BAKERY K-PORT(ベーカリーケイポート)長田本店

所在地 兵庫県神戸市長田区御屋敷通6-3-12
電話番号 078-600-9616
営業時間 10:00~18:00(売り切れ次第終了閉店)
定休日 日・月・火曜
Instagram @bakery_kport

灘店
所在地 兵庫県神戸市灘区鹿ノ下通2-4-11
電話番号 078-600-9685

Column

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生まれも育ちも神戸の生粋の神戸っ子で、長年の関西での取材経験からおいしいお店を知り尽くしている、ライターのそおだよおこさんが、関西の「今、食べてほしい!」というおやつを紹介します。

2025.05.11(日)
文・撮影=そおだよおこ