王道のお造りから始まる鮨パート

 少しずつ鮨の予感がちりばめられてきたコースも、いよいよ鮨へ。シンプルなお造りの登場で一気に鮨の世界に突入する。まったく違うはずの世界観の間を滑らかに移行するのがさすがである。ここからは安田至料理長率いる熟練した鮨の板前たちが腕を振るう。

 フレンチの世界から引き戻された世界では、ヤニックシェフが大好物だという大トロなどパンチのある味わいで。中とろには炭の香りをほんのりと纏わせている。

 握りは10カンほど。玄米酢と米酢をブレンドして作った酢飯(これもヤニックシェフの大好物)は、なんともやわらかな酸味で、食後も喉が渇かないように作ってるという。また、リンゴ入りのガリも甘みとみずみずしさがおいしくて、ついつい箸が伸びる。

 握りは白身や昆布〆、赤身のヅケとリズミカルに続き、笹にのせて香りよく焼いたアナゴで小休止。

 口直しの「豆腐」は、できたてにトマトの透明なスープをかけたものをつるりといただく。

 海老のひと皿では、優しくしっとりと火を通し、柚子風味のごまと生姜、大葉、そしてブラックレモンが入ったマヨネーズを添えて。

 そして、鮨の〆としてウニと焼いたアブラボウズのミニ丼や大トロの巻き物にカウンターのあちこちから歓声が上がり、鮨は大団円。シグネチャーでもある「大地と海のコンソメ」を飲んでほっとひと息となる。

2025.04.18(金)
文=CREA編集部