“私”の最期の瞬間まで安心して一緒にいられる

契約書を作ってから2年後。相川さんは自宅で最後の日々を過ごしていました。残された時間を病院ではなく自宅で過ごしたかったのです。何より、あずきちゃんがそばにいてくれることが相川さんの心の支えでした。ベッドで横になっている相川さんのそばで、いつもと変わらずゴロゴロと喉を鳴らし甘えるあずきちゃん。相川さんが息を引き取るその瞬間まで、あずきちゃんはそばを離れませんでした。

相川さんが亡くなったあと、あらかじめ段取りを決めておいた通り佐藤さんがカフェに連絡。カフェスタッフがあずきちゃんをお迎えに行きました。相川さんのお兄さんは当初、自分がいるのに猫がよそへ行くことに戸惑っていましたが、遺言書にあった相川さんの言葉で納得することができました。

カフェに来た当初は緊張してシャーと威嚇していたあずきちゃんもいまでは新しい生活に慣れ、のんびりマイペースに過ごしています。里親募集もしていますがまだよいご縁がなく、10歳になったいまはカフェの看板猫のひとり。相川さんの友人佐藤さんも定期的にカフェを訪れ、あずきちゃんを見守っています。
本書には、ペット信託を締結するためにどうしたらいいかの具体的な方法や文面の例などが細かく紹介されています。ぜひ参考にしてみてくださいね!
富田園子(とみた・そのこ)
ペット書籍を多く手掛けるライター、編集者。日本動物科学研究所会員。編集・執筆した本に『決定版 猫と一緒に生き残る防災BOOK』(日東書院)、『野良猫の拾い方』(大泉書店)、『教養としての猫』『猫とくらそう』(ともに西東社)など。

私が死んだあとも愛する猫を守る本
著者 富田園子 監修 磨田薫
定価 1,650円(税込)
日東書院
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2025.04.09(水)
文=富田園子、CREA編集部