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乾燥は大敵

――気温や湿度によっても音は変わるのでしょうか。

藤原 変わってきます。特に乾燥は楽器にとって大敵です。割れたりひびが入ったりすることもあるので、乾燥対策はいつも非常に気を遣っています。ただ、どんなに気をつけていても割れてしまうこともありますので、海外に行くときは普段あまり持ち歩かないスペアを持って行くこともあります。

――藤原さんはどのくらいの数の尺八をお持ちなのですか?

藤原 50本はあると思います。尺八は短いものから長いものまでいろいろあり、短ければ高い音、長ければ低い音が出ます。

 また、同じ長さでも「この楽器ではこの音が出るけど、この楽器ではこの音が出る」というように1本1本性格が違うので、それによっても使い分けをしています。

――技法によっても、楽器個体によっても音が変わるのですね。無限に音が生み出せそうですが、どうやって音を覚えていくのですか?

藤原 基本的には楽譜がありますが、私にとっては、楽譜は忘れないためにあるようなものですから、楽譜を見て覚える、耳で聴いて覚える、どちらの方法も採り入れています。

 ただ、子どもの頃は、私の師匠でもある人間国宝の初代山本邦山先生がやっておられることをそのまま真似していました。真似ることで技術も習得できることがだんだんわかってきてからは、いろいろな方の真似をするようになりました。

2025.03.12(水)
文=相澤洋美
写真=志水 隆