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 デビュー25周年を迎えた尺八演奏家・藤原道山さんにインタビュー。古典から西洋楽器とのコラボレーションまで、さまざまな演奏で尺八の可能性を広げています。3月29日からは、尺八とピアノのデュオによるコンサートツアー『藤原道山 25th Anniversary Concert「(かい)」』がスタートする藤原さんに、尺八との出会いや尺八の魅力についてお聞きしました。


――藤原さんは自身のオリジナル楽曲や舞台音楽など、作曲も多く手がけています。曲はどのようにつくっているのですか?

藤原道山さん(以下、藤原) 作曲の分野では私はアマチュアみたいなものですから、まずは自分の中で物語をつくり、それに即した風景を考えて曲を作っています。プロの作曲家は、イメージだけで曲がつくれる方も多いようですが、私は「物語」がないと曲が作れません。

――その物語はどういうふうに浮かんでくるのですか?

藤原 いろいろ眺めたり考えたり、本を読んだりと、さまざまなところからインスピレーションを得ています。

 舞台などの音楽を頼まれて作曲するときは、依頼された内容に沿うようにタイトルを先に決め、そこからイメージ先行で作り始めることが多いです。

――尺八は「時代劇で虚無僧が吹いている」というイメージを持っている方も多いと思いますが、藤原さんの尺八曲は、現代的な響きを感じます。藤原さんは西洋の楽器とのコラボレーションなども精力的に行っていますが、それも現代らしさを生み出すひとつの理由になっているのでしょうか。

藤原 和楽器と西洋楽器のコラボレートは、実は決して新しいことではないんです。

 私がこれまでやってきた洋楽器とのアンサンブルは、実は100年ぐらい前から行われてきたことです。

 武満徹が1967年に作曲した、琵琶、尺八とオーケストラのための音楽作品『ノヴェンバー・ステップス』は、琵琶と尺八でコンチェルトをつくったという点では、注目されるトピックだったと思いますが、実のところ、大正時代にはもう「和洋合奏」は行われていました。箏とバイオリンの合奏などもよく行われていたようです。

 ただ、演奏している曲自体はどんどん新しくなっていますので、私も伝統的な曲や自分の中のベーシックとしても培ってきた曲は大事に持ちつつ、チェリストの古川展生さん、ピアニストの妹尾武さんとのユニット「KOBUDO -古武道-」のように、常にアップデートして今の時代の音も生み出していくよう意識しています。

2025.03.12(水)
文=相澤洋美
写真=志水 隆