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西洋楽器とのコラボレーションを始めたきっかけ

――そもそも藤原さんが西洋楽器とのコラボレーションを始めたきっかけは何だったのでしょうか。

藤原 叔父がジャズピアノをやっていて、私の師匠・初代山本邦山先生もジャズのアルバムを出していたので、それに憧れて中学校ぐらいからピアノと合奏をしていました。

 さらに高校で入ったブラスバンド部でいろいろなフィールドの音楽を知り、いつかオーケストラを集めて、コンチェルトをやりたいと思うようになりました。

 大学は東京藝術大学に進学したので、西洋楽器の友達をたくさん作り、大学4年生のときにオーケストラとのコンサートを開催しました。

――西洋楽器とのコラボレーションにはどのような魅力があるのでしょうか。

藤原 自分が今まで感じていなかった音の風景に出会えることです。そして、それにより、自分が今までやってきた伝統的なものを客観的に見られることです。

 私は、楽器は思いや時代とともに育っていくものだと考えています。いま「古典」と言われている音楽も、当時は最先端のものだったはずです。新しい音楽のように聞こえるものが、実は時代の移り変わりとともに忘れ去られてしまった当時の「スタンダード」だった、ということもあります。

 私が、伝統的な曲や自分の中のベーシックとして培ってきてきた曲を大切に受け継ぎながら、今の時代の音楽もどんどん生み出しているのは、いつかそれが新しい「古典」になってほしいという思いがあるからです。「継承」には、伝統をただ守るだけではなく、常に新しいものを生み出していくことも必要だと私は思っています。

――藤原さんは大学でも教鞭を取っておられます。いま、また尺八を学びたい若者は増えているのでしょうか。

藤原 コロナ禍で減ってしまいましたが、尺八を学びたい学生は一定数います。また、海外では尺八人気が高まっています。1994年に日本の岡山県美星町で「第1回ワールド尺八フェスティバル」が行われましたが、2025年4月17日から20日までは、アメリカのテキサス州で第8回目ワールド尺八フェスティバルが開催されます。

 私も講師として参加する予定です。近年は海外の方々の尺八レベルが格段に上がっているので、日本人として多少の焦りを感じつつ、大きな刺激をもらってこようと思っています。

2025.03.12(水)
文=相澤洋美
写真=志水 隆