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藤原道山さんインタビュー #1
藤原道山さんインタビュー #2
デビュー25周年を迎えた尺八演奏家・藤原道山さんにインタビュー。古典から西洋楽器とのコラボレーションまで、さまざまな演奏で尺八の可能性を広げています。3月29日からは、尺八とピアノのデュオによるコンサートツアー『藤原道山 25th Anniversary Concert「邂」』がスタートする藤原さんに、尺八との出会いや尺八の魅力についてお聞きしました。

――藤原さんと尺八の出会いから教えてください。
藤原道山さん(以下、藤原) 尺八をはじめたのは小学校5年生のときです。祖父の友人が尺八をやることになり、リコーダーが好きで家でもよく吹いていた私に「やってみたら」とすすめてもらい、習うことになったのです。
私の祖母は、「春の海」を作曲した宮城道雄先生に箏を習い、自宅で箏の教室を開いていました。子どもの頃から和楽器の音は「日常の、あたりまえにある音」でしたので、尺八にもまったく苦手意識はありませんでした。
――尺八は音を出すのが難しいといわれています。
藤原 はい。尺八は「首振り3年、コロ8年」といわれます。首を振って音の加減ができるようになるまで3年、「コロコロ」と心地よい音が出せるようになるには8年かかるという意味です。
私も最初は音が出ませんでした。始める前に「難しい」とは聞いていましたが、学校ではリコーダーを上手に吹けていましたし、いくら難しいとはいえ、尺八も楽器である以上、何かしらの音が出るだろうと思っていたのです。
ところが、まったく音が出ません。まだたった10歳でしたが、生まれて初めて「音の出ない楽器」に出会い、衝撃を受けました。

そして、自分が音を出せないことが悔しくて、悔しくて……。必死で練習し、1週間くらいで少し音が鳴るようになってきたときは、本当に嬉しかった。その「音の出た喜び」から、尺八という楽器の魅力にはまり、もっとうまくなりたいと思うようになった気がいたします。
2025.03.12(水)
文=相澤洋美
写真=志水 隆