【次に流行るもう一曲】
The Mirraz「この惑星のすべて」

繊細なんだけど大胆、雑なんだけど計算高い

伊藤 あと、同週にThe Mirraz「この惑星(ほし)のすべて」がリリースされますが、このバンドは歌詞が面白い。詩人なんだけどシュールレアリスト、繊細なんだけど大胆、雑なんだけど計算高いなぁと。カップリングの「ステーキを食べに行こう」が雑すぎて、個人的に好き。

山口 「雑で、計算高い」が上級のほめ言葉って、伊藤涼という人もわかりにくいというか、誤解されやすい人格だね(笑)。「誤解されるかもしれない」というのが、Mirrazに共感する理由なのではありませんか?

伊藤 そんなことは……。でも、確かに「雑」にも「計算高い」にも褒め要素が入ってない(笑)。誤解されやすい人格のままでは不味いんで補足すると、最近はサンカクのモノはきっちりサンカクなことが多く、ズレることがないので、なんでも凄く綺麗で頑丈に出来ている。それはそれで安心だし安全だし、悪いことではないんだけど、それを敢えて壊したものを「完成前」ではなく、根拠をもって「完成後」と呼んでいる。一見、昔から有ったモノのようなんだけど、何かが違う。パッと見では分かり辛いけど、実は周りのモノより先を行っているという、褒め言葉でした。これって、わかりやすい?(笑)

山口 完成度の高さと初期衝動の強さを両立させたいという、ポップスを創るときの、ジレンマであり、醍醐味を伝えたいのだろうけれど、決してわかりやすくはないよ(笑)。でも、僕はMirrazに対する見方がポジティブな方向に変わりました。注目したいと思います。

The Mirraz「この惑星のすべて」
ユニバーサル ミュージック 2014年5月21日発売
初回限定盤(CD+DVD)1,600円、通常盤(CDのみ)1,000円
■The Mirrazは、2006年に結成され、12年にメジャーデビューを果たした4人組ロックバンド。社会風刺を織り交ぜた奔放かつシニカルな歌詞、ヒップホップを思わせるビート感、性急で矢継ぎ早なヴォーカルスタイルが特徴。
■「この惑星のすべて」作詞・作曲/畠山承平
■「ステーキを食べに行こう」作詞・作曲/畠山承平
■オフィシャルサイトURL http://the-mirraz.com/

山口哲一 (やまぐち のりかず)
音楽プロデューサー、コンテンツビジネス・エバンジェリスト。(株)バグ・コーポレーション代表取締役、「デジタルコンテンツ白書」(経産省監修)編集委員。プロデュースのテーマに、ソーシャルメディア活用、グローバルな視点、異業種コラボレーションを掲げて、音楽とITに関する実践的な研究を行っている。著書に『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)、『ソーシャル時代に音楽を“売る”7つの戦略』『プロ直伝! 職業作曲家への道』(リットーミュージック)がある。最新刊は『世界を変える80年代生まれの起業家 ~起業という選択~』(スペースシャワーネットワーク)。詳細プロフィールはこちら
Twitter@yamabug https://twitter.com/yamabug
ブログ「いまだタイトル決めれず」 http://yamabug.blogspot.jp/
作曲家育成セミナー「山口ゼミ」 http://www.tcpl.jp/openschool/yamaguchi.html
WEDGE Infinity連載「ビジネスパーソンのためのエンタメ業界入門」 http://wedge.ismedia.jp/category/entertainment

伊藤涼 (いとう りょう)
音楽プロデューサー、ソングライター。ジャニーズ・エンタテイメントで『青春アミーゴ』などのミリオンセラーをプロデュース、後にフリーランスに。ソングライターとして、乃木坂46『走れ!Bicycle』、AKB48『ここにいたこと』などの作品がある。作詞アナリスト、フードミュージックプロデューサーとしても活躍。論理的で明晰な分析力に注目。
マゴノダイマデ・プロダクション http://www.mago-dai.com/
ブログ「伊藤涼の音楽」 http://ameblo.jp/magodai/
伊藤涼が主宰する作詞研究室リリック・ラボ http://www.mago-dai.com/?p=551

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2014.05.15(木)
文=山口哲一、伊藤涼