この記事の連載

 間近に迫ったバレンタイン。ショコラティエたちが生み出した渾身のひと粒は、今しか手に入れられないものばかりです。

 オリジナリティにあふれ、繊細なテクニックと上質な素材を使ったチョコレート。ここではスイーツライターのchicoさんに注目のチョコレートについて紹介してもらいました。


植物で叶える、瑞々しい味わいと色彩

 「植物のポテンシャルに頼るだけではなく、菓子職人としての技術とアイディアで、植物にしかできない美味しさを追求したい」。プランツベース(植物性の材料で作る)の新しいお菓子のカタチを追い求め、「RAU」の
シェフショコラティエール 高木幸世氏が手がける「Sachi Takagi」。

 シグネチャーである生チョコレートももちろんプランツベース。チョコレートはコスタリカで自ら選び抜いた有機カカオ豆で仕立てたビーントゥバー(カカオ豆から自分たちで作る自家製チョコレート)。生クリームやバターを使わず、植物だけで濃厚な味わいを叶えています。

 まず驚くのは、アーティスティックな美しさ! プランツベース、ましてや生チョコというと茶系の素朴な姿を想像されがちですが、シェフショコラティエールの高木幸世さんは天然色素で自然の美までも描き出します。生チョコに重ねたシュガーペーストをキャンバスに、花びらや風に揺れる木々、差し込む光など、それぞれのフレーバーをイメージしつつ、植物を包み込む自然界を映していきます。

絵画展さながらの、アートなアソート

 新作のアソートボックスに広がるのは、絵画展のような光景。これまでは1箱に1フレーバー入りのみでしたが、初めて6種のアソートが登場。少しずついろんな味わいを楽しめるように。

 一粒いただけばシュガーペーストがシャリッ、生チョコがスッと軽やかに溶け、クリアな香りを放ちます。まるで果実を飲むような、それぞれの味がすっと体に行き渡る感覚。そうした瑞々しさと滑らかなテクスチャーは植物だからこそ。また、乳製品を使わない分、食材の香りがマスキングされず、よりダイレクトに感じられます。

 明るい黄色やオレンジのカラーリングで原産地の南米をイメージした「パッションフルーツ」は、果汁たっぷり! ホワイトチョコガナッシュにピリリとしたジンジャーのアクセントを加えることで、完熟パッションフルーツの酸味と芳醇さを表現しています。目が覚めるような甘酸っぱさやエキゾチックな香りがジンジャーの清々しさで際立ち、一層情熱的で爽快なトーンに。

 「ハイビスカス」は、様々な香りを合わせることでハイビスカスが持つ熱帯地域を彷彿させるフローラル香をより引き出したそう。

 甘酸っぱくフローラルながら、瑞々しくボタニカル。嫌味のないエレガントな香りは、とびきり香り高い紅茶をいただいているようでもあり、花畑にいるようなナチュラル感も醸します。

 華やかでフレッシュな味わいは、一日花として毎日新しく輝くハイビスカスの姿にも重なるよう。また、水色、ピンク、黄色、白で描いた模様は、ハイビスカスが色ごとにもつ、さまざまな花言葉を表現。あらゆるベクトルから素材を味わう感覚が新鮮です。

2025.02.13(木)
文=chico