一度は手術を決意したけれど…

 その数年前に、父が大腸がんの手術を受けていたんです。私のがんが発覚した時には父は復職して元気に過ごしていたのですが、自分よりもずっと若い娘ががんになったことは青天の霹靂だったと思います。さらに、父の母も若くしてがんを患っており、父が11歳の頃に34歳で亡くなっているんです。そのこともあって、父にとってはかなりのショックだったと思います。

――治療方針については、どうやって決めたのですか?

 父も母も一貫して、「お願いだから、先生のいう通り手術を受けてほしい」と言っていました。直近に父のがんを経験しているからこそ、再発や転移を未然に防ぐためには子宮全摘をした方がいいと分かっていたのだと思います。「孫の顔を見せないといけないと考えないでほしい」と父に泣きながら説得されたことは、かなりこたえましたね。

 友達を含め、周りの人全員が「絶対に手術をした方がいい」と言いました。皆の説得を受けて「子宮を失っても、仕事を頑張れば何とかやっていけるかもしれない」と無理やり考えるようになりました。それで一度は、「手術を受けます」と決意したんです。

――その後、子宮全摘手術を受けなかったのはなぜだったのでしょうか。

 手術予定日まで1ヶ月あり、その間に「子宮をとったら終わりだ」という思いが強くなっていきました。「手術をしなくても、がんは再発しないかもしれない」と都合よく解釈したり、「これほど悩むなら、手術をしたら後悔するんじゃないか」と徐々に思い詰めるようになったんです。手術の2日前に、気づいたら先生に電話をして、「手術できないです」と言ってしまいました。

 先生は私の意志を尊重して、「今回は手術はやめましょう」と言ってくださいました。ただ、その条件として1ヶ月に1回大学病院で検査を受けること、次に少しでも異常があったら今度こそ手術を受けることを約束しました。

――5年後に、がんの再発が分かったのはなぜだったのでしょうか。

2025.02.12(水)
文=都田ミツコ