犬たちとエミューの関係は“微妙”

 現在、サホさん一家の一日のスケジュールは、朝6時すぎに起床した夫のデービッドさんがまず犬たちをドッグランで遊ばせることから始まる。というのも、犬たちとグルートの関係は、なかなか微妙なのだそうだ。

「最初の頃よりはグルートの存在に慣れてきた感じはあるのですが、やっぱりまだちょっと警戒してますね。グルートが外に出ているときは、犬たちは固まっちゃう(笑)。なので朝、グルートを小屋から出す前にまず犬たちを遊ばせるんです」

 ちなみに今や170cmを超えるぐらいにまで成長したグルートは、夜は広い庭の中の2mのフェンスで囲まれた小屋の中で過ごしている。朝、犬たちの時間が終わると、次はグルートの番だ。

「ぐるぐると敷地の中を歩き回って、ときどき、地面に生えている草を食べたり土を掘り返してミミズなどをついばんだり、気ままに遊んでますね」

エミューは何を食べるのか?

 当初グルートに期待されていた“草取りヘルパー”としての働きぶりについては「食べてはくれるんですが、ヤギとか馬みたいにムシャムシャ食べる感じではないです。こっちでついばみ、あっちでついばみ、前後と比べると、うっすら草が少なくなったかな、ぐらいです。でもいいんです」とサホさんは笑う。

 朝のひと遊びが終わると、8時ごろに「朝食」の時間。基本はキャットフードと鳥用のフード、それに野菜を混ぜたものを与えているという。

「あげる野菜は季節によって違うんですけど、春から夏にかけてはアブラナが周りにいっぱいあるので、それを適当にあげてます。秋から冬にかけての端境期は生えている葉物がなくなるので、小松菜を買ってました。小松菜は好きみたいで結構バクバク食べるので、この時期は結構エサ代はかかっちゃいますね」

 とくに好物なのは「イチゴとかベリー類とか赤くて丸い果実」だそうだが、ミミズや幼虫なども見つけたら好んで食べているという。

 その後、サホさんが家で仕事をしている間も、グルートは自由に外を歩き回っているが、昼食の時間になると犬たちを外に出すので、グルートはいったん小屋に収容される。犬たちの時間が終わると、再び外に出されたグルートは午後の自由時間を満喫する。

「私が剪定とか草取りとかの庭仕事をしていると、何となく私のそばにいるので、家の外にいる時間がさらに楽しくなりましたね。水遊びもすごく好きなので、たまにホースで水をかけてあげると喜んで、その後で全速力で駆けまわったりします」

 真夏は木陰でずっと休んでいたが、涼しくなってから急にまた食欲旺盛になった。

 そして夕方になると小屋へと帰る。「帰る」というのは、つまり「エサで誘いこんで小屋に入れちゃいます」ということである。

写真=松本輝一/文藝春秋

「鋭い爪で引っかかれて出血」「あちこちで大量のフンを…」エミューと暮らす女性が“そういう生き方もアリか”と思うワケ〉へ続く

2025.02.08(土)
文=伊藤秀倫