東京郊外に移住→突然「エミューを飼いたい」…会社員女性が“寿命20〜30年”のエミューとの暮らしを“夫に納得させるまで”〉から続く

 2021年10月に、熊本県の観光牧場から23羽が脱走し、「エミュー」が一躍脚光を浴びたが、昨年も各地の飼育場などからエミューが脱走したことがニュースになっている。実際に共に暮らしてみると、エミューはどんな生き物なのだろうか。

 東京から電車を乗り継いで2時間ほどの里山で、会社員をしながらエミューと暮らすサホさん。週に1、2回は都心へ出社しているという。

 自宅を訪ねてサホさんの話を聞いている間、ケージから出してもらったグルートは、敷地内で家の周りを自由に歩き回っている。時折、開いているリビングの窓からにゅっと首を突き出して、中をのぞきこんでくる。人間に媚びるところのない無遠慮な視線が印象的だ。

「これでもウチに来た当初は、キュンキュン鳴きながら、私の後をずっとついてくるのが可愛かったんですよ」

 当時の写真を見せてもらうと、雛の頃のグルートは今と違って、身体も小さく首も短い。その体表には星屑を散らしたような縞模様が入っている。

「そうそう、このシマシマが可愛いかったです。ただ羽毛は、思ったよりザクザクしていて、正直手触りはあまりよくなかったですね。半年ぐらいすると、その下から大人の羽毛がムクムクと生えてきて、中の方はすごいフワフワなんです。成長するにつれてシマシマも消えて、ヘアスタイルはショートモヒカンになりました」

(全3回の2回目/#3に続く)

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最初は犬との違いに戸惑った

 グルートは基本外飼いで、来た当初は1m×1.2mほどの犬用のケージに入れていた。

「この辺は田舎なんで、やっぱり猿とかいるんですよ。野良猫ももちろんいますし、狸とかハクビシンとかもいるので、そういうのにイタズラされたり、いじめられないようには注意していました」

 エミューどころか、鳥類を飼うこと自体、初めてだったサホさんは、最初は犬との違いに戸惑ったという。

「小さいうちは抱っこしたりできるのかな、と思ってたんです。でもエミューは両脚がきちんと地面についてないと暴れちゃうからダメと聞いて、それは断念しました。あとは、犬みたいに“ルルル”と呼びかけたら来るようにならないか、と思ってちょっとトレーニングもしてみたんですが、これは早々に無理ということがよくわかりました」

2025.02.08(土)
文=伊藤秀倫