自宅からエミューが脱走…「とても焦りました」東京に出勤しながらエミューと暮らす会社員女性が語る“理想と現実”〉から続く

 東京から電車を乗り継いで2時間ほどの里山で、会社員をしながらエミューと暮らすサホさん。自宅であるログハウスでの取材をいったん切り上げ、庭に出て、いよいよエミューの「グルート」と対面してみる。

 見慣れぬ人間が近づいてくるのを視界の端で捉えていたのか、グルートはさりげなく距離をとるように歩き始めた。が、サホさんも我々の近くにいるためか、遠くに逃げるでもなく、付かず離れずの距離をキープしている。

(全3回の3回目/最初から読む)

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この脚で蹴られたら「アザになります(笑)」

 まず目を惹きつけられるのは恐竜を思わせるような太い脚だ。

――この脚で蹴られたら痛いでしょうね……。

「痛いです。アザになります(笑)。脚もまたどこから飛んでくるのかわからないんですよ。前に蹴るときもあるし、横向きとか、後ろにも蹴れます。今でもよく蹴られます」

――どういうときに蹴られるんですか?

「例えば私が帰宅するのが遅くなって、グルートを早く小屋に入れようと後ろからグイグイ押したことがあったんです。そうしたら、バスンとやられました。それは私が悪かったな、と反省しました。機嫌をうかがわずに、有無を言わさずにグイグイしちゃったんで」

 改めてグルートをよく観察してみる。頭をくいっと伸ばすとその目線は身長170cmの筆者とほぼ同じ高さだ。

 灰褐色の羽毛に覆われたシルエットはお尻の部分がふわりと膨らんでおり、ちょっと貴婦人のドレスを思わせる。遠くから見たときは、確かにダチョウに似ていると思ったが、間近で見た印象はやはり恐竜に近い。通常、鳥類の足指は4本だが、エミューには3本の鋭い爪が生えている。

――この爪もかなり鋭いですね。これで引っ掻かれると血が出そうですが……。

2025.02.09(日)
文=伊藤秀倫