ヒットさせるつもりはあった

宮島 『元彼の遺言状』が出た途端、あんなにヒットすると思わなかったからでしょう。だからうかつなことを言ってしまったんじゃないですか?

新川 でもヒットさせるつもりはあったんです。先輩作家から、デビュー作がヒットするかどうかでその後の道が変わると聞いていたこともあり、これで売れなければ出版界終わってる、みたいなところまで頑張って宣伝活動したんです。そこまでやってデビューを迎えたので、売れた時は「よし」という気持ちでした。

宮島 私は全然売れる気はしなかった(笑)。新潮社のプロモーション部が目をつけてくれてからですね、売れるのかなと思ったのは。

リズム派の作家と、ノンリズム派の作家

新川 書いた後にかなり直す方ですか。

宮島 鉛筆(ゲラに編集者や校閲の意見を書き込む)を入れてもらって、そこから結構改稿します。でも指摘されたことを加筆すると、その部分が浮くんです。

新川 わかります。指摘された一文を入れるためには、前の2段落も直すはめになりません? 今日はその話をしたかったんです。私はリズム派の作家と、ノンリズム派の作家がいると思っているんです。ただリズム派作家はリズムがあってもそのリズムがいいとは限らないし、リズム派ではない作家のリズムが悪いわけではない。

 リズム派で、リズムのいい作家を見つけると私は狂喜乱舞してしまう。宮島さんがまさにそれ。

宮島 ああ、うれしい。そうなんですよ。本当にそれって自分の天性のものだと思っているんです。訓練せず自然とできるので。

新川 リズムがいい人って、読者の視線の動きの速さを何となくわかって書いていると思うんです。説明するとすごく難しいことをしているように聞こえますが、身体感覚としてやっていることなんです。ノンリズム派の人は、読書家の場合が多いですね。

2025.01.25(土)
文=内藤麻里子