林 雑誌のグラビアを飾りそうな美貌と親しみやすさですから、アイドルと同一視されてもおかしくないですね。
小田部 そうそう。とはいえ、1950年代のミッチーブームなんかとも騒ぎ方が違います。ネット社会になってから、特に若い男の子たちがそれこそAKB48でも追っかけるように国のプリンセスを追いかけるようになりました。そもそも今のアイドルって昔の女優などと違い、会いに行ける、握手できるという身近さが売りになることが多いじゃないですか。知らず知らずのうちにファンはアイドルを友だちくらいの感覚で見ているけれど、実はその距離はそんなに近くないんです。同じように、国民と皇室が一見近づきすぎたために、何かあったときの反発は大きくなる。ある程度の距離はお互いあってしかるべきだったんですけど、忘れてしまったのかなという感じです。
林 距離感といえば、絶妙なのが愛子さまかな。ちょっと近づきがたいオーラを放っていらっしゃるじゃないですか。勉強もできて人柄もよくて、子供を学習院に通わせている知り合いによれば、ものすごくみんなの尊敬を集めてらっしゃるって。
小田部 そうですね。やはり象徴たるものオーラとカリスマ性が必要です。われわれと同じかちょっと上くらいでは、なかなか仰ぎにくい。そういう意味では、学習院女子高等科時代からダンスをされていた佳子さまも、あまりに一般の人々とお近づきになりすぎてしまって、「なんだ、俺たちと変わらないじゃないか」と思われたのでしょう。同じ踊りでも日本舞踊くらい、「私たちじゃできないよね」という上流感がないと。
林 私も昔日舞を習っていて、名取ですよ(笑)。昔の下町の子なんて割とやっていたんじゃないでしょうか。能のお仕舞とかの方が上流っぽいかも。
小田部 なるほど。上流の伝統文化というか、簡単に手が届かないものがいいですね。もちろん皇室と国民との距離が近い方がいい場合もあるんですが、同じでいいという誤解を受けてしまうのはよくない。「皇族はわれわれとはちがう」という意識は必要だと思います。
2024.12.15(日)
文=林真理子、小田部雄次