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生理ケアにも「バリアフリー」の視点が必要

――今回のように、「生理」をはじめ、妊娠や更年期など、女性ならではのお悩みや、心と体の健康について語られる機会が増えつつあります。みなさんは、これからどんな社会を目指していきたいと思いますか?

石浦 障害があっても、生理期間を不安なく過ごせる社会になってほしいと思います。月経カップのような新しい選択肢が広がり、誰もが自分に合った方法で生理を管理できる環境が整えば、障害の有無に関係なく、より安心して生活できるはずです。

――障害者の生理ケアについて、これからの社会はどのように変わるべきだと思いますか?

神林 障害者の生理ケアにも「バリアフリー」の視点が必要だと思います。まずは、障害を持つ方々がどのような困りごとを抱えているのか、その声を社会に発信し、届けることが大切ですよね。

木下 たとえば、月経カップの使い方や生理用品の購入における困難など、具体的なエピソードを共有することで、多くの人が「こんなことに困っているのか」と気づくきっかけになります。そうした声を拾い上げ、共有する仕組みがもっと広がるといいなと思います。

石浦 私自身も、声を上げることで初めて周囲に理解してもらえると感じています。月経カップを使い始めた体験を共有することで、「それなら自分にもできるかも」と思う人が増えたらうれしいですね。

――月経カップのような新しい選択肢が出てきた時も、つい健常者から見て便利か否かだけで判断してしまいがちです。そうならないために、具体的にはどんなことが必要だと思いますか?

神林 障害を持つ方が、安心して自分の経験や悩みを話せる場を作ることが第一歩だと思います。その声を共有し、製品やサポートの改善につなげたいです。また、学校や職場での性教育の充実、生理に関する正しい知識の普及も欠かせません。これによって周囲の理解が深まり、協力し合える環境が生まれるはずです。

「バリアフリー」という言葉は、建物や設備だけでなく、生理ケアや日常生活、仕事、ファッション、恋愛といったさまざまな場面で必要だと感じます。私自身、障害を持つ方々が直面する課題について最近学び始めたばかりですが、こうした気づきを共有し、一人ひとりができることを考えて行動することが、社会をより良くする大きな一歩になると信じています。

石浦 私も、自分の体験を共有することで「それなら自分もできるかも」「こんな方法があったのか」と思う人が増えてほしいと願っています。一人ひとりが声を上げ、その声を周囲が支える仕組みを作ることで、障害があっても自分らしく過ごせる選択肢が広がることが大切だと思います。

木下 実際に障害を持つ方々と接するなかで、具体的な困りごとやサポートの方法を学ぶことができました。それを一つひとつ実践し、小さな行動を積み重ねることで、大きな変化を生む力になると思います。みんなで力を合わせて、すべての人が安心して暮らせる社会を目指していきたいですね。

石浦智美(いしうら・ともみ)

新潟県上越市出身。生まれつき、緑内障と無光彩症があり、将来的には見えなくなるだろうと診断される。医師のすすめで2歳ごろから水泳をはじめ、高校3年生で初めて国際大会へ出場。東京パラリンピック、パリパラリンピックに2大会連続で出場し、東京では50m自由形で7位、パリでは混合400mリレーで6位、100m自由形で8入賞を果たした。伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社所属。


神林美帆(かんばやし・みほ)

インテグロ代表取締役。約8年間、国内大手航空会社で国際線キャビンアテンダントとして勤務。その後、カナダへ留学し、帰国後は米国口腔ケア商品の日本市場立ち上げに従事。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(MBA)修了。2016年、月経カップと出会い、その快適さと安心感に感銘を受け、2018年にインテグロ株式会社の代表に就任。著書に『私たちの月経カップ:より快適な新しい時代の生理用品』(現代書林)がある。


木下綾乃(きのした・あやの)

生理ケア&月経カップアドバイザー。筑波大学 体育専門学群 卒業、中高保健体育教員免許取得。筑波大学 人間総合科学研究科 体育学専攻 博士前期課程 修了。3歳から水泳を始め、約18年間にわたり競泳選手として活躍。月経カップを使い始めてから、生理中の過ごし方や生理への意識が大きく変化。これまでの経験を活かし、月経カップの選び方や使い方、生理ケアに関する情報をワークショップやSNSなどで発信している。

私たちの月経カップ より快適な新しい時代の生理用品

定価 1,540円(税込)
現代書林
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2024.12.17(火)
文=河西みのり
撮影=平松市聖