同人活動や大人オタクならではのあるあるはもちろんのこと、ローンの支払いや家賃収入などの不動産経営で直面する問題も学ぶことができる本作。夢の実現を前に立ちはだかる現実はなかなかに世知辛い。が、そんな中でA子の夢を応援する同人仲間たちや、仲間のサポートのおかげもあって集まった入居者たちの間に生まれる女性同士の緩やかな連帯が眩しく映る。性格や好きなジャンル、それぞれの同人活動の出力方法は違っても根っこは同じな彼女たちの会話を、いつまでも聞いていたいと思えた。
作品の設定は2011年あたりとのこと。そこから推察すると登場人物たち各々のハマっているジャンルのモデルがなんとなく見えてくるところも楽しい。
いくつもの困難を乗り越え、無事満室となった同人女アパート。肩の荷が下りてようやくイベントに出かけることができたA子だったが、そこで新たな問題が発覚する。不穏なラストにハラハラし、どうか私たちの将来の夢そのままの同人女アパートが無事運営されていきますように、と神を拝みながら次巻を待っている。
(「週刊文春」2024年4月11日号掲載)
〈同人女が同人女アパートを建てようとする話「第二の人生としてアパートの大家もいいかな…って」〉へ続く
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2024.12.09(月)
文=宇垣美里