当時の花田(勝彦)監督が運営管理車から「おい、地下。よく頑張ったな。よく熊本から来てくれたな。ありがとうな。さあ、残りは、お前の花道だぞ。お前の桧舞台だ!頑張って良かったな」と声がけし、それを紹介した蛯原(哲)アナウンサーが感極まって涙ぐみながら「地下選手は地元の球磨村に戻り、村役場に就職して第二の人生が待っています」と実況しました。私が取材した内容でした。地下選手はフィニッシュすると、走ってきたコースのほうを向いて一礼したんです。こういう状況を想定して聞いた話ではないんですが、放送で選手が輝く瞬間があると、100取材してよかったなと本当に思いますね。

『俺たちの箱根駅伝』の中でも、辛島アナウンサーが事前に取材する場面があるんですが、彼の目を見て、選手たちは自分たちへの理解と愛情を感じ取ります。そこで辛島アナは一瞬にして選抜チームの懐に入って取材を進めていきます。限られた取材時間の中でいかにして選手の心の扉を開けるか、これは実際の取材でも本当に重要です。私のプライベートなことや盛り上がりそうな話題を提供して緊張を解きほぐそうと取材時間の多くを使ってしまうこともあるので、選手を目で落として最初の質問から核心に迫っていく辛島アナのような取材ができたら、最高だなと思います(笑)。

町田浩徳(まちだ・ひろのり)
1973年新潟県生まれ。早稲田大学人間科学部を経て98年日本テレビ入社。多くのスポーツ中継に携わり、現在は「Oha!4 NEWS LIVE」(水曜)に出演、「DayDay.」(金曜)や「ライターズ!」のナレーターも務めながら、野球・MotoGP・ラグビーなどの実況を担当

選手の頑張りを「声」で伝える……筋書きのない熱いドラマを中継スタッフ一丸で!〉へ続く

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2024.11.22(金)
文=町田浩徳