季節感のある繊細な仕事が評判に
薯蕷きんとん「錦繍」を作る様子を見せてもらいました。手亡のこし餡に丹波つくね芋をふんだんに合わせたきんとん生地を色付けして、とおしで濾してそぼろ状にし、丹波大納言小豆の粒餡の周りに箸でひとつひとつ付けて作られます。
「一部の御菓子は、こうやって作る様子もご覧いただいています」と山崎さんはにっこり。
「もとはといえば、私自身がからだが丈夫でなかったことから中国伝統医学(中医学)の勉強を始め、学ぶうちに、二十四節気が理にかなっていると気づいたんです。元々、好きだった和菓子も、銘やモチーフ、由来となる風習にそれが表されている。上生菓子で二十四節気がよくわかる」
國際中医薬膳師の資格を取得し、自身でセルフケア講座(スローエイジング講座)を始めるにあたって、「美しさや愛らしさとともに内容が記憶に残るように御菓子をお出ししようと思ったのですが、御菓子屋さんに少量あつらえてもらうのは気がひける。だったら自分で作ろうと」。本やネットの動画を見て作り始めますが、わからないことが多く、職人の菓子教室や京都の老舗に教わるようになります。
「練り切り、きんとん、ういろう、求肥、薯蕷饅頭など、繰り返し作ることで、自分なりの御菓子ができるようになりました」。2019年4月から、働いていた神戸・岡本の日本茶カフェ「一日(ひとひ)」で提供し、評判になります。
「御菓子屋で修業もしていないし、専門学校にも行っていない」と山崎さんは言いますが、“好きこそものの上手なれ”で、茶道を学びながら少量ずつ豆から餡を炊いて1個ずつていねいに作る御菓子はどれもハイレベル。お稽古やお茶席、イベント用の御菓子の注文も入るようになりました。
山崎さんは生菓子だけでなくお茶席に欠かせない干菓子にもこだわって、木型からオーダー。抜き型もたくさん集めます。、とうとう2024年、「時を味わう 和の習いにふれる」をコンセプトに自店をオープンしました。
「刻々と移っていく季節を楽しむことこそが、何よりこころもからだも養ってくれます。甘さも美しさも一瞬でほどける。そんな一瞬のための御菓子を、手間と心をかけて作っていきたい」と山崎さん。
11月後半は、ういろうの「いちょう」、きんとんの「木枯らし」、練り切りの「照葉」などが登場。二十四節気に合わせて、1年に24回、御菓子を食べて季節を愛でる習慣があってもいいですね。ひととき、御菓子とお茶で、上質なおやつタイムを。
汐音屋
所在地 兵庫県神戸市東灘区田中町1-11-7
電話番号 非公開
営業時間 喫茶は13:30~15:00、15:30~17:00 各回6名限定、持ち帰りはHPを参照
定休日 火・水・木曜、不定休あり
※喫茶、持ち帰りともオンラインでの完全予約制
Instagram @shioneya
https://shop.shioneya.com
Column
そおだよおこの関西おいしい、おやつ紀行
生まれも育ちも神戸の生粋の神戸っ子で、長年の関西での取材経験からおいしいお店を知り尽くしている、ライターのそおだよおこさんが、関西の「今、食べてほしい!」というおやつを紹介します。
2024.11.10(日)
文・撮影=そおだよおこ