NHK大河ドラマ「光る君へ」は、主人公のまひろ(紫式部)が「源氏物語」の執筆を開始した後半からますますの盛り上がりを見せている。在仏ジャーナリストの広岡裕児氏によると、普段はあまり大河ドラマに興味をもたないフランス人の妻が「『光る君へ』を毎回欠かさず見ている」という。戦国時代にはない、「光る君へ」の魅力とは何なのだろうか。
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ここまでつくっていいものか?
「NHKワールドJAPAN」という海外向けテレビ放送がある。無料で英語版、独自の番組で構成されている。このほかに、「NHKワールド・プレミアム」というのがあって日本の番組をそのまま放送している。ただしこれは有料。私はフランスで、インターネット・プロバイダーのテレビで視聴しているが、月に25ユーロとられる。総合やEテレ、BSの番組で構成されているが、その目玉はなんといっても大河ドラマだ。
今年は「光る君へ」。
私は、日本の古典文学が大好きである。とくに、「枕草子」は学生時代に読み、その言葉のリズム、美しさにも酔った。「源氏物語」は何度かトライしたが挫折した。谷崎潤一郎の現代語訳でも同じだった。若かったからかもしれない。今回は、その清少納言や紫式部の時代である。キャストを見ると、赤染衛門も道綱母も和泉式部もいる。
それから、戦国時代や明治維新など激動のない「平安時代」で一体1年間のストーリーをどうもたせるのか、という別の興味もあった。
はじまってみると、藤原道長とまひろが幼馴染で恋仲になる。脚本の大石静さんは阿川佐和子さんとの対談で「二人の若い頃はまったく史料がないので、オリジナルで作り込んじゃってます」(「週刊文春」2023年9月7日号)といっているが、ここまでつくっていいものだろうか? それに、道長の兄がまひろの母を殺してしまう。清少納言(ききょう)と紫式部がまるで親友のように話すなんてありえない……。
ところが、あるときふと気付いた。
2024.10.19(土)
文=広岡裕児