累計470万部を突破した「池袋ウエストゲートパーク」。果物屋の店番にしてトラブルシューターのマコトが池袋で起こるさまざまな事件を追う超人気シリーズだ。9月24日には記念すべき第20弾『男女最終戦争 池袋ウエストゲートパークXX』(文藝春秋)が発売された。
著者の石田衣良さんは1997年にオール讀物推理小説新人賞を受賞。翌年、受賞作を表題作とした『池袋ウエストゲートパーク』で華々しくデビューした。しかし、シリーズ1作目が、突然爆発的に売れたというわけではなかったと、石田さんは語る。
「最初はほとんど手ごたえがなかったんです。他の出版社の人に『石田さん、どれくらい売れているんですか』と聞かれて、『全然売れてないよ』と答えると、『これだけ話題になっていて業界でもみんな面白いと言っているのに、増刷がかからないなんておかしい』と言われたことを鮮明に覚えています。ただ、業界受けがよかったおかげで仕事の依頼はたくさん入ってきましたね」
2000年にTBS系列でドラマ化されたあとは、周知のとおり日本中を「池袋ウエストゲートパーク」が席巻した。長瀬智也、窪塚洋介をはじめ、現在では主役級の若手キャストが勢ぞろいしたこのドラマは「伝説のドラマ」として現在まで語り継がれるものになった。
「あのころは面白かったな。ドラマのなかで、窪塚くんが白いタンクトップを着ているんだけど、ドラマの放送が終わって次のネタを探しに池袋に行ったら、西口公園に白いタンクトップのやつが何十人もいて。うわ、キング大量発生!と笑ってしまったね。この人たち元の小説は読んでないんだろうな、と思いながらも、小説家にはこういう楽しみもあることを知りました」
当初からシリーズ化できると思っていたというが、ここまで長く続いた秘訣はなんだったのだろうか。
「最初に1本書いた段階で、かっこよかったんだよね、マコトやタカシが。これくらい強いキャラクターがたくさんいて、しかもみんな若者っていう小説はその当時は他に全然なかったから、なにか新しい世界を作り出した感覚があって、これでもう大丈夫だと思いました。あとは、シリーズものって、ガチガチに縛られていたほうが書くのは楽なんですよ。このシリーズの場合も、キャラクターが決まっている、場所も限定されている、となると、あとは事件の新しさとか、時事ネタの切り口の新しさで勝負するしかない。そういう苦しい状態にもっていったのが、逆に長く続いた理由だったと思います」
2024.10.11(金)
文=「週刊文春」編集部