大石 ちょっと恋をしただけで仕事を失うって、恐ろしい世の中です。「いい思いしやがって」という人々の嫉妬心。
有働 脚本家の仕事は、そういう変化の影響を受けますか?
大石 普段できないからドラマの中で夢を見てもらえるようにと思って作っています。特に平安時代は、男が女を挨拶代わりに抱くような……廊下なんかでもやっちゃったらしいんですよね。
有働 廊下でも!?
大石 女性も添い遂げるなんていう感覚はさほどなく、嫌だと思ったら転職するように夫を替える。だから男も女もみんなが逞しいし、根源的なエネルギーに溢れていた時代なんです。今のこの閉塞的な時代に「やりたい放題でもいいんじゃない?」という気持ちも、脚本に込めました。
有働 私は独身ですけど、この仕事をしていると、恋をしていることも明かせなかった。男がいると思われちゃいけない感じがして。
大石 それはNHKのアナウンス室がなかなか窮屈なところだったんでしょう。私なんかは結構やりたい放題でいましたよ。
有働 それこそ不倫も?
大石 結婚前に不倫したり、結婚してからも好きな男ができたりしました。72歳になった今では、欲望も薄らいでますけど(笑)。
有働 若い頃が気になります!
大石 欲しい男は必ず押し倒していました。私は黙っていても誰かが寄ってくるような有働さんのような魅力がないので、好きな人には「好きです」と打って出る。男の人って気が弱いから、必ず「そんなに僕を好きなら付き合ってみましょうか」ってなりました、昔は。
有働 ひえ〜、すごい。『セカンドバージン』は女性が17歳下の男性と不倫する話でしたが、執筆当時の大石さんは22歳下の方と付き合っていたと聞きました。
大石 はい。私の知り合いにも似たような人がいたし、表に出ないだけで意外とあるものなんですよ。
有働 そういう恋人の存在は、夫公認だったんですか?
大石 もちろんそうです。いつでもそうです。
2024.09.23(月)
文=大石 静,有働 由美子