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青田買いした注目の新人作家の作品は?

◆『十次と亞一』コドモペーパー/新書館

 売れないマンガ家・小林十次は、ひょんなことから売れっ子の幻想小説家・大江亞一と出会う。明治・大正期の架空の下宿屋を舞台に描く、ふたりの男をめぐるミステリ。

「大正ロマンの色濃い時代を舞台にした非BL系ボーイ・ミーツ・ボーイの物語。謎解きとふたりの友情とが掛け合わされたストーリーも魅力的。本作は万年筆を使って描いたというのも驚きであり、そのタッチに惹き込まれます」

◆『花の在りか』大横山飴/KADOKAWA

 物書きをしている主人公・三ツ郎が、子ども時代に仲のよかった真帆と再会したことから、物語が動き出す純文学的青春譜。

「青年マンガ(なのでちょっとエロ系)で数年前にデビューしているので青田買いか微妙ですが、「月刊コミックビーム」で出たこれが実質デビュー作とみていいのではと。地方の街に戻ってきた青年と女性が再会するのですが、恋愛未満の彼らの距離感がリアル。しかも彼らの宙ぶらりんな内面(居場所が決まらない、将来が見えないみたいな)と関係性と二重写しになっていて、うまい。映画を観るような作品に仕上がっています。独特の画風も含め、マークしていきたい作家さん」

◆『梅花の想ひ人』おく/KADOKAWA

 日本各地の民話をもとにした5篇を収録。美しく迫力のあるフルカラー作品集。

「ストーリーは、日本各地に点在する昔話がベースで、それをアレンジして作られています。ゆえに、どこかで見知った話(オムニバス。たとえば1話目は「鶴の恩返し」みたいな話)なのですが、圧巻の画力と組み合わさると、ものすごく豊かな作品になるんですね。1ページ1ページが絵画のよう」

2024.10.03(木)
文=大嶋律子(Giraffe)