この記事の連載

◆『阿武ノーマル』原作:川上大和、作画:タイジュン/講談社

 OL・阿武英子は29歳、独身、彼氏なし。ものごとの価値基準は「普通」か否か。「普通」に固執する彼女を取り巻く新感覚サイコサスペンス。

「群雄割拠のマンガ界においては日々素晴らしい新人作家が台頭していますが、本作のおふたりにおいては目の肥えた読者の予想を超えてくる作品強度と遊び心が際立っていると感じます。

 『普通』になりたい“サイコ”な女と他人を蔑む中身のない男が最悪の出会いをするのですがいつしか妙なバディみたいになっていき――。毎話更新が楽しみです。ぜひこのままオリジナルロードをぶっちぎってほしいです」

推薦者

物書き
SYO(しょー)さん

映画雑誌の編集などを経て独立。映画やドラマ、マンガ、アニメといったエンタメ系からライフスタイルまで幅広く執筆。トークイベントや映画情報番組などにも出演。

◆『思春期姉弟』みそくろ/ワニブックス

 思春期を迎えた中学校2年生の男女双子、日野陽介とみかげを軸に描く青春コメディ。

「新人とは思えぬ描写力とキャラクターの表情の豊かさです。本作はフェティシズムがテーマになっている作品なのですが、フェチ表現が非常に個性的。登場人物それぞれが思春期を迎え、心と体が大人になっていくなかで覚醒するフェティッシュの世界が瑞々しく、かつ大胆に描かれています。マンガ通にこそ読んでいただきたい作品!!」(すず木さん)

「双子の中学生姉弟の身体と心の成長をめぐるドタバタは、気恥ずかしくもコミカルで楽しい。そして人を好きになること、本能とは? に向き合う様子は、思春期をとっくに過ぎた大人にも、なんだか繋がっているように感じられる」(みさきさん)

推薦者

ブックライブ書店員
書店員すず木(しょてんいん・すずき)さん

年間読むマンガは2,000冊以上。総合電子書籍ストア「ブックライブ」編成担当で、この道10年以上のベテラン書店員。毎月おすすめの新作マンガを紹介する「月刊 書店員すず木」公開中。
https://booklive.jp/

推薦者

マンガ司書
みさき絵美(みさき・えみ)さん

公共図書館、マンガ専門図書館の司書を経て、現在はマンガのアーカイブに取り組んでいる。

◆『馬刺しが食べたい』桜井さよる/集英社

 好物である馬刺しの絵で、絵画コンクールの大賞を受賞した女子高生・梅野かえで。その絵が話題となり、なぜか強面な同級生・竹内聡巳に目をつけられてしまう。

「食べ物の絵を描くことで、男子同級生の偏食を直していく、まさかのグルメ×美術マンガ。馬刺しネタでこれだけ押せるのがすごい。幸せな気持ちになる読後感。そして馬刺しが食べたくなる」

推薦者

小説家
新川帆立(しんかわ・ほたて)さん

東京大学法学部卒業後、弁護士として勤務。第19回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2021年に『元彼の遺言状』(宝島社)でデビュー。著書『競争の番人』(講談社)など多数。近著に『女の国会』(幻冬社)がある。

◆『線場のひと』小宮りさ麻吏奈/リイド社

 「戦後」と呼ばれる時代を日本とアメリカに生きた、異なる背景やアイデンティティを持つ4人の物語。

「久しぶりに表紙買いをした。自分が多感な人間になったように感じるくらい、コマから感情がほとばしる」

推薦者

編集者・元「このマンガがすごい!」編集長
薗部真一(そのべ・しんいち)さん

文藝春秋編集者。担当作に『週刊文春エンタ+』『証言「機動戦士ガンダム」』『この世界の片隅に 対談集』(文藝春秋)『翔んで埼玉』(宝島社)など。

2024.09.28(土)
文=大嶋律子(Giraffe)