レーベルの情報コントロールに明確な戦略はあるか?

山口 レコード会社の宣伝部から資料提供を断られたそうですね。びっくりしました。業界マナーに則って、丁重にお願いしているはずなんですけどね。僕らは正確な情報に基づいて書きたいと思っているだけなのですが、資料を渡すと掲載内容を認めたことになる、と思ったんですかね? 僕らのブログならともかく、文藝春秋が運営するサイトのコラムに対して、そこまで警戒するのは、レコード会社の過剰反応だなと正直、思いました。

伊藤 どうせググるんですからね(笑)。YouTubeの音源の中で、比較的音質の良いのを探して何度も聴きました。その後、山口さんからNTTぷららでやっているキャンペーンサイトを知って、曲はそこで聴けますね(外部サイト)。

山口 アーティスト発では最先端のデジタルPRをしているのに、変な感じですよね(笑)。僕も同業者で、情報をコントロールしたい気持ちは痛いほどわかるので、批判するつもりはないです。ただ、一般論として言うと、インターネットの時代に、情報を伏せる方向で操作しようとするのは、労力がかかる割には、得るものが少ない作業になりますね。明確な戦略があるのならよいのですけれど。

伊藤 その辺のことはジャニーズのディレクター時代に苦労したし、いろいろな葛藤がありました。でも、あれだけ明確な戦略をもって徹底的に情報をコントロールするというのは、インパクト大ですよね。TVドラマでジャニーズのタレントが主演なのに、ドラマHPのキャスト紹介のページに彼の写真だけないとか(笑)。今、あんなことできるのってジャニーズくらいですからね。

山口 最近の例で言うと、昨年12月、ビヨンセのサプライズリリースは、お見事でした。iTunes Storeで突然リリース。「今日、リリースしました」と最初に告知されたのはinstagramというSNSのアーティスト本人のアカウント。CDのリリースはその後という戦略です。セールス的にも、話題作りとしても大成功でしたね。リリース当日までまったく発売が漏れませんでした。パパラッチと契約して、箝口令をしいたという噂まで聞きましたよ。情報を伏せるなら、そのくらい徹底して、確信犯でやらないとね。

伊藤 責任を自分でとる覚悟が無ければ確信犯になんてなれるわけがない。そういう意味ではアメリカのアーティストはインディペンデントなマインドを持っているから強いですね。

山口 そうですね。この種のことに正解はなくて、売れればOK。まさに「勝てば官軍」です。SEKAI NO OAWRIは、大きなメディアタイアップもあるし、アーティストの発信力も強いですから、普通の些末なメディア露出に対しては、できるだけ相手にしない、みたいなスタンスは、一つのやり方かもしれません。

SEKAI NO OWARI「炎と森のカーニバル」
トイズファクトリー 2014年4月9日発売
通常盤1,200円、初回限定盤A1,800円(CD+DVD〈「炎と森のカーニバル」ミュージックビデオ〉)、初回限定盤B1,800円(CD+DVD〈「炎と森のカーニバル」トータルレコーディングドキュメンタリー〉) ※以上税抜価格
■NTTぷらら「ひかりTV」CMソングとしてオンエア中の表題曲に加え、新曲「ピエロ」、「深い森」のリミックスバージョン「Holy Forest -remixed by melodysheep from U.S.A-」を収録した5枚目のシングル
■「炎と森のカーニバル」作詞・作曲/FUKASE 編曲/SEKAI NO OWARI、CHRYSANTHEMUM BRIDGE
■オフィシャルサイトURL http://sekainoowari.jp/

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2014.03.25(火)
文=山口哲一、伊藤涼