#4 遊女たちの月経期間は命がけ
ところで、性のサービスを生業とする女性たちは月経の期間、一体どうしていたのだろう。遊郭で働く女たちは、莫大な借金に加えて着物等の諸経費が嵩み、返済がなかなか進まない仕組みもあって、生理だからといって安易に休んだりはしなかった。
花魁などのトップクラスは、自分で自分の揚げ代を支払って休んでいたともされるが、悲惨なのは、血は感染源とされながら“生理中の女性と交われば性病が治る”というとんでもないデマが広がり、逆に危険に晒されたこと。そういう意味でもまさに命がけの仕事だったのである。
#5 江戸時代からサステナブル、生理用に再生紙
昨今のフェムテックの台頭でにわかに注目を浴びることになった自然素材の布ナプキン。それは、デリケートゾーンがムレにくく肌に良いなどの理由とともに、繰り返し洗って使う布製はサステナブルにもつながるとして注目度が高まった。
でも実は、江戸時代から生理にまつわるサステナブルは始まっていたと言ってもよく、ふんどし型の月経帯を使うときに肌に当たる部分に使われた紙というのも、実は使用済みの和紙などを再利用した再生紙だったのだ。明治からは新聞紙も使われ、ボロ布よりは清潔というふうに考えられた。
#6 でも昔の生理回数は、現代の9分の1ってほんと?
一人の女性が生涯で経験する月経の回数……これは現在の平均値が約450回であるのに対し、昔の女性は50回程度だったという見方が一般的。実に今の9分の1である。
一つに、昔は栄養状態も悪く初潮が大体15歳前後だったとされるから。また多くが早婚で子だくさん。それこそ20歳ごろから繰り返し妊娠していて、加えて昔は閉経も早かった。
つまり生理回数をここまで増やしたのは、女性の体と生き方の変化が原因。結果として現代女性は人類史上最も多くの月経を営んでいることになり、その分苦悩が多いのは確かなのだ。
2024.08.16(金)
文=齋藤 薫(美容ジャーナリスト)
写真=釜谷洋史