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 タイの人気BLドラマ『Lovely Writer The Series』や『Step By Step』などに出演し、アップの愛称で親しまれるプーンパット・イアン=サマンが来日。初めてのホラー映画出演となる『フンパヨン 呪物に隠れた闇』では、身寄りのない自閉症の青年テを演じている。俳優業に加え、日本で言えば東大に当たる、タイの名門国立大学であるチュラロンコーン大学の博士課程で学ぶ学生でもあるというから驚き。その素顔に迫ってみた。(全2回の前編。後編を読む


フンパヨンは一部の地域に残る風習

――『フンパヨン 呪物に隠れた闇』はとても怖いホラーでした。まさかアップさんがこういった役をやると思ってなかったので、ちょっと驚きました。

 僕にとってもすごくチャレンジでした。新しい役に挑戦するのは毎回楽しいです。

――ホラー映画への出演は初めてですよね。元々お好きでしたか?

 初めてですね。でもホラーは、見るよりも演じる方が好きです。だって見るのは怖いですから(笑)。演技自体は楽しかったですし、この役を演じることができて幸せでした。自分にとってはすごくチャレンジだったと思ってます。ロケ地となったのは、映画に出てくるような儀式を実際に行っている場所で、バンコクからとても離れた山奥なんです。そこへスタッフが50人から60人ぐらい一緒に行って暮らしたので、それも楽しかったですね。

――映画のタイトルであるフンパヨン(パヨン人形)は、土偶や人形を意味します。タイでは、フンパヨンを使った神聖な儀式が有名なのでしょうか?

 実は僕も今回、初めて知ったんです。出演するにあたってフンパヨンについて色々調べたんですが、大昔からタイにあって一時期すごく流行ったけれども、今はかなり廃れてきていることがわかりました。今でも実際にフンパヨンを作っている人はいますけれども、ごく一部の地域にだけ残る風習です。

――いわゆる地方ではまだ行われているということですか?

 そうですね。でも実際には、この映画に出てくるような大掛かりな儀式ではありません。あの儀式ができるのは呪術師だけなんです。

2024.06.27(木)
文=石津文子
写真=志水隆