中国のパンダの獣医師も参列
追悼式では、長年にわたり、タンタンのために竹を供給した神戸市淡河町自治協議会「笹部会」の岩野憲夫さん、西浦常次さん、辻井正さんも登壇。「タンタンがおいしそうにエサを食べているのを見て、私も元気づけられたことを昨日のように覚えております」と振り返りました。
タンタンのために「中国ジャイアントパンダ保護研究センター」から来日して、2月26日(月)から5月末まで滞在した獣医師の楊 海迪(よう かいてき)さんも参列。楊さんは3月31日(日)夜、王子動物園の獣医師と共にタンタンの死亡を確認しました。東京の上野動物園で吐き戻しをしたオスのリーリー(力力)の健康管理のために、同園で4月22日(月)に行われた検査にも楊さんは立ち会っています。
楊さんは追悼式で「ずっと日本のチームとともにタンタンの治療に努めてまいりました。私たちは何度も何度も奇跡を目撃してきました。日本チームのメンバー全員の献身的な治療と努力にも感謝したいと思います」と話しました。梅元さんは楊さんのことを「とても勤勉で真面目な方。タンタンの日々の健康管理や治療について、たくさんの役立つアドバイスをいただけました」と評しています。
追悼式の後は、神戸市の久元喜造市長らが記者会見に対応。神戸市が引き続きパンダの飼育繁殖研究を希望していることに対し、見解を求められた中国駐大阪総領事館の薛 剣(せつ けん)総領事は「こういうお気持ちがあることは、しっかり承っております。これから相互の間で検討することになると思います」と日本語で答えました。
王子動物園の加古園長と吉田さんと梅元さんも登場。最初は3人とも沈痛な面持ちでしたが、タンタンとの楽しかった思い出などを問われて答えるうち、笑みがこぼれるようになりました。
タンタンは死後ほどなくして解剖され、6月12日(水)時点で園内に保管されています。今後、中国へ送られる予定です。
園内のパンダ館でタンタンが過ごしていた場所は、たくさんの花で彩られました。献花の受け付けが4月2日(火)に始まると、全国から多くの人が訪れ、花を手向けたり手を合わせたりして、タンタンを偲びました。泣いている人もいます。タンタンが生前、寝転んでいた寝台を目の当たりにして、筆者も涙が出ました。
献花は当初、郵送でも受け付けていました。ただ、1日に数百の花が届き、供えるまで時間がかかって場所も少なくなったことから、やむなく郵送での受け付けを終えると王子動物園は4月6日(土)に発表。献花の数は、追悼式前日の5月9日(木)までの期間で約5,000束です。パンダ館での献花は5月28日(火)まで受け付けました。
園内の動物科学資料館では、特別展「ありがとうタンタン」を5月11日(土)~9月1日(日)の予定で開催中。「日中共同飼育繫殖研究」の成果のほか、タンタンが生前、ブラッシングしてもらっていたブラシや、薬入りのジュースを飲む際に使っていたフライパンなどを展示しています。
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2024.06.18(火)
文・写真=中川美帆