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 たしかな実力と才能を持つ若手俳優――坂東龍汰(27)、髙橋里恩(26)、清水尚弥(29)。今をときめく3人が、二ノ宮隆太郎監督の待望の最新作『若武者』に集結した。2024年5月25日(土)に公開される本作は、幼馴染の若者が“世直し”と称して街の人間たちの些細な違反や差別に対し、無軌道に牙を剥いていくストーリー。ふりかざす正義が徐々に“暴力”へと変化していくさまを3人は見事に演じきった。

 しかし取材になると一転、誰よりもムードメーカーな坂東を中心に、20代の若者らしい軽快な会話と冗談が飛び交う。演技論、私生活、お互いの性格分析――あらゆることを語り合う貴重な鼎談が実現した。

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俳優の仕事の「原動力」は何?

――みなさんが俳優になった経緯を教えていただけますか?

清水 僕は11歳のときに、原宿でスカウトしていただいて。

坂東 そうなんだ? すげえ!

清水 母子家庭なんですけど、もともと母親がダンサーで父親がギタリストで。芸事をやってきた家だったので、スカウトされたことを親に伝えたら、「落伍していく人は自然にやめることになる。始めるきっかけをせっかく頂戴したんだからやってみてもいいんじゃない?」という反応でした。

髙橋 僕は10代の頃、親や周りの大人からものすごく心配されていたんです。16歳から居酒屋でバイトをさせてもらっていて、そこに今所属している鈍牛倶楽部の社長たちがご飯を食べに来て。ちょうど若手を探していたのか、「よかったらやらない?」と言われて。高校卒業前のタイミングで、ご縁があって養成所に入りました。

坂東 僕は北海道から上京してきて、あてもなくフラフラしていたときに、鈍牛倶楽部に自分から履歴書を送りました。

――そして『若武者』という作品で共演した今、どんな想いや目標が、俳優という仕事の原動力になっていますか?

髙橋 恩返しです。この業界にいさせてもらって、なんかこう……(自分が出演する作品で世の中を)盛り上げることができれば、家族やお世話になった人たちも喜んで、笑顔になってくれるんじゃないかなと思っています。

清水 修行僧みたいな感覚です。もっともっとお芝居がうまくなりたいという欲求があります。でも、やってもやってもきりがないですし、達成することは多分ないと思うので。

坂東 僕は高校のカリキュラムで舞台があって、その本番で、爆発力みたいなエネルギーを経験しました。表現することにちょっと前向きになっていた時期で、「これしかないかもしれない」と初めて思ったのが、お芝居だったんです。正直、あのアドレナリンを超えた瞬間はまだないですし、死ぬまで出会わないと思うけれど、また出会えることを信じてやっています。わからないものを追い求めながら、わからないまま死んでいけたら本望です。

――諦めずに続ける。

坂東 そうですね。それに近いアドレナリンが毎回出るので、それを信じて。

2024.05.25(土)
文=須永貴子
撮影=榎本麻美