この記事の連載

 まもなく主演舞台『う蝕』が上演される坂東龍汰さん。撮影中も、そばにあった照明器具を帽子のように被って見せるなど、ユニークな発想の持ち主。インタビュー後編では学生時代のお話から、プライベートについて語ってもらった。

前篇を読む


――『う蝕』は坂東さんにとって2本目の舞台。映像でご活躍されていますが、そもそも俳優を目指そうと思われたきっかけとなったのは、高校時代に主演されたイプセンの舞台『民衆の敵』だったそうですね。

 直接のきっかけになったのはそうですね。トマス・ストックマンという、ほぼ一人で語り続ける役で、当時の僕のキャパシティを超えていて、稽古は修行のようでした。でも、その修行を経ての本番は、まるで別次元の爆発的な忘れられない体験でした。

 ただ、それ以前もお芝居には興味がありました。僕は小学校から高校までシュタイナー教育の学校に通っていたので、テレビやゲーム、インターネットに触れることを禁止されていたんです。ただ、父が無類の映画オタクで、「映画はいいんじゃないか」と中2ぐらいから、毎週土日はレンタルビデオ屋に行って、映画を1本借りて観ることが許されました。それが、すごい楽しみでしたね。

――坂東さんが好きなものを観ていたのですか? それともお父様が選ばれていた?

 父のセレクトが多かったです。最初の頃は暴力的なシーンのないものなどを選んで観させてもらっていました。父は熱狂的な黒澤 明ファンなので、黒澤映画は強制的に全て観せられました(笑)。

――学生時代、スポーツは何かなさっていたのですか?

 野球は少しやっていました。高校では社交ダンスも。体育の授業で習ったのがきっかけです。それまでダンスに全く触れてこなかったので、リズムに乗って体を動かす楽しさに惹かれました。表現力も豊かになりますし、将来のためにもなるかなと続けていました。北海道大会に出場して3位になったことも。ただ、出場していたのは5組でしたけど(笑)。

――社交ダンスが今のお仕事に生かされたなと思ったことはありますか?

 (しばらく考えて)『春に散る』でボクシングを習った時、ボクシングって、肩を下げて、首を長くした状態で構えないといけないんです。それは社交ダンスの姿勢と共通していたかもしれないです。

 あとは、オーディションでよく「踊れますか?」と聞かれて、明らかにヒップホップを求められているのに、相手もなしに一人でシャドウで踊ってみたりもしました(笑)。

2024.02.09(金)
文=黒瀬朋子
撮影=橋本 篤
ヘアメイク=OLTA 後藤泰
スタイリスト=李靖華