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みずきさんのがんについて

 みずきさんの場合はすい管がん、腺房細胞がんと言っていますけれど、すい液が出るところに発生するがんで、質が悪いがんです。

 治療の面で言えば、すいがん患者のフォルフィリノックス治療というのは、とてもキツイ治療なんです。

 ただこの治療をする多くは60歳以上、でも65歳以上には無理と決まっている治療なんです。

 だからシニアのマラソン大会に、若者が紛れ込んだような状況ですから、それはもう群を抜いていい成績が出るはずですよね。普通ならみずきさんのように12回の治療を、2週に1回のペースではなかなかできないです。

 通常、ステージ4で遠隔転移のあるがん患者さんは手術できない、手術しても治らないので体に大きな負担をかける手術治療はしません(体力低下で生存期間が短くなる可能性があるため)。でもみずきさんの場合は、若いということが有利に働いて、普通だったらできないことができているということですよね。こんなに若くして発症するすいがん患者は少ないので、それ自体は不運だけれども、不幸中の幸いで、治療そのものはうまくいったということですね。

アンチについて

 芸能人やインフルエンサーのがんのニュースにはみなさん興味を持つし、そのうえ一般の方が発信するようになったものが、YouTubeの推奨動画にたくさん上がってくる。それが強い影響力を持つようになってしまったから、がん関連学会が行う市民講座のようながん啓発運動より、一般の方が発信する情報のほうがよっぽど強くなってしまった。

 YouTubeの場合、がんの終末期でどんどん悪くなっている方のチャンネルの視聴数が大きく伸びる傾向があるようです。それはもう、猛烈な勢いで。

 そうすると、それだけを見た人には「がんって最後はこんなに悲惨になるんだ」っていう刷り込みが強固になっていくんですね。有名人・著名人のみならず、一般の方々もそうやってがんの情報を発信するようになって、「がんとはこういうものだ」というイメージが定着していく。

 やっぱり重要なのは、時代がどんどん変わってきていることです。がん治療も発展しているけれど、がん治療や患者の環境も変わってきている。その変化が急激なものなので、サニージャーニーが注目されていくなか、詐病疑惑をかけられてしまっている。サニージャーニーのアンチの方々も、自分たちの印象が全てだと思い込んで反応している可能性があります。

 この本の読者やYouTubeの視聴者も、いろんな情報ひとつひとつに直接反応するのではなくて、複数の情報の中から、正確なことを教えてくれるような、「キュレーター」のような人を確保したほうがいいかなと思います。孤独な人ほど誤った情報に騙されやすいんです。自分の立ち位置がわからないままネット検索ばかりをしてしまうから。

2024.05.27(月)
文=押川勝太郎、双葉社編集部