なので十分「娯楽」として面白いと思っていたのだが、この方からすれば『虎に翼』は「ドラマで社会を操ろう」としているという。だから単純に楽しませろ、と。

 はて?

エンタメと社会性の両立

 エンタメと社会性の両立については、脚本を担当している吉田恵里香氏がインタビューで次のように語っている(朝日新聞5月3日)。

 

「エンターテインメントと社会性は両立すると思っています。というより、切っても切れないものです。どんな作品も作り手の思想がのるもので、思想がないようにみえるものは『思想がない』という思想です」

「でも実際に生きづらい人たちや当事者が声を上げたり一生懸命前に出たりすると、時に矢面に立ち、攻撃を受けてしまう。だから私はエンターテインメントが代わりに声をあげて、攻撃をかわす盾になれたらいいなと思っています。」

 過去を題材にしながら「今」を描くこともエンタメの面白さだろう。しかし、生きづらい人たちや当事者が声を上げたりすることを描くと「ある方向に誘導」「政治的な意図やメッセージを社会に訴えるためにドラマを使うな」などとすぐさま言われる。揚げ句には「感じが悪い」と。こういう言説を可視化させただけで『虎に翼』は成功なのではないか。

「面白い」について考えた

 今回改めて思ったのは「面白い」ということについてだ。面白いには笑いや楽しさはもちろん、興味深い、考えさせられるという意味だって含まれるはず。だから『虎に翼』は「面白い」を提供していると思う。それでも「単純に視聴者を夢中にさせたり、楽しませたりするために作ってほしい」と本気で言うなら、視聴者は単純な馬鹿だと思っていないだろうか。

 というわけで『虎に翼』の記事を読み比べてみました。阪神タイガースの成績次第で今後もスポーツ紙に登場しそうです。

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2024.05.28(火)
文=プチ鹿島