「はて?」と思ったコラム

 一方こんなコラムもあった。

『主人公は現代からタイムスリップ? 「虎に翼」に違和感 政治的な意図やメッセージ、社会に訴えるためのドラマ使用いかがなものか』(夕刊フジ5月2日)

 この記事の筆者はテレビプロデューサーの鎮目博道氏。テレビ朝日でプロデューサーを経て、ABEMAの立ち上げに参画。「Abema Prime」をプロデュースした方だという。

 鎮目氏は、

《ドラマが一番訴えたいことが「フェミニズムの重要性」でいいのでしょうか?》

 と問い、

《僕はやはりテレビドラマというのは娯楽のためのものだと思うので、単純に視聴者を夢中にさせたり、楽しませたりするために作ってほしいと思います。》

《あまり「政治的な意図やメッセージを社会に訴える」ためにドラマを使うのはどうなのか。》

《ドラマで社会を操ろうというか、ある方向に誘導しようというのって、感じ悪いです。》

 

『虎に翼』について「感じ悪い」とはっきりと書いていた。さすがに「はて?」と思った。鎮目氏は《私の周囲の女性にも絶賛している人が多いので、普段あまり朝ドラは見ないんですが、見てみました。》というが本当にちゃんと見たのか不思議に感じた。

王道の楽しさ

 というのも私が『虎に翼』を見ている理由は娯楽として面白いからだ。伊藤沙莉や岡部たかし、石田ゆり子、仲野太賀ら役者陣が楽しみで見始めた。そしたら物語も面白い。「はて?」や「スンッ」など言葉の表現も絶妙。「スンッ」とは言いたいことがあっても空気を読んで何も言わない態度のことだ。尾野真千子のナレーションも楽しい。寅子の父親が裁判で判決を受けるシーンは小学4年生になるウチの娘も「早く続きが見たい」とドキドキしていた。そういえば法廷劇ってドラマや映画では王道の楽しさだ。

 最新号の「週刊文春」では宮藤官九郎氏が「法律と女性の権利について考える物語だけど深刻ぶってないのがいい。伊藤沙莉さんはじめ俳優陣も美術もタイトルバックも尾野真千子さんの語りも、全体的に可愛げがあって観ててしんどくない。」と書いていた。

2024.05.28(火)
文=プチ鹿島