沖 やっぱり他の人の写真と比べてしまうことじゃないですかね。人より劣っているところばかり見てしまって、それが積もり積もっちゃうと、「もう写真はいいかな」と思っちゃいがちですよね。
今だと特に、「いいね」がもらえないことで消極的になりやすいと思うんです。つまずくところってそういうところなんじゃないかな。
――沖さんは「いいね」の差でつまずくことはなかったですか。
沖 僕はなかったんですよね。もともと会社のためのインスタグラムに勝手に猫の写真を上げ始めたのがきっかけでしたし(笑)、一人でも喜んでくれたらいいなっていう、それが僕にとってはゴールだったんですよね。
一時期、写真家のテラウチマサトさんのカメラ教室に通っていたんですけど、そのときに本を出せることになりました、と報告したら、「出版に携わった人みんなが、これは自分の本だと思うような、独りよがりじゃない本を作ってね」と言われたんです。
そのときは「何言ってんやこの人」と思ったけど(笑)、テラウチさんは「誰かに喜んでもらうもの」を作るために努力し続ける大切さを教えてくれていたのかな、と思います。思い返せば、前に勤めていた婦人服屋さんの社長もそういう人なんですよね。
とはいえ自分も、そんな人たちから継続する意味を教えてもらったからちょっと変われただけで。それこそずっと、「小さいゴールに何の意味があるわけ?」とかって、何にでも楯突くような人間でしたから(笑)。
――努力をしても変えられない、しんどいことはありませんか。
沖 「寝てるだけでお金が入れば幸せなのにな~」って毎日考えるくらいなまけ者なんで、そんな自分が出張となると、もう憂鬱ですね。「チケットとかホテルの手配とか嫌だな~」ってずーーっと思いながら、前日ぐらいに力技で息を止めて一気にやってます。
ただ、「水もの」と言われているお仕事をされている方よりも自分の職業はさらに「水」だと思っているので、今はなんとかうまくはいってるけど、じゃあ来年は?といったら分からない。不安は尽きないですよ。だから、ずっと頑張ってやり続けるしかないかなって。
2024.05.15(水)
文=小泉なつみ